「走れ！青春/友よ友よ」

作詩：保富康午/作曲：浜 圭介/編曲：井上 鑑

当時毎年やっていた"日生ファミリースペシャル"で放映された太宰治著の小説のアニメ『走れメロス』の主題歌である。当時は、こうした文学作品のアニメ化もあったし、オリジナル長編アニメなんかあって、今よりもはるかにアニメが豊かであったと思う。
個人的には、いわゆる"ジャパニメーション"の領域からは外れるこうした硬派なアニメも大好きです。今思えばいい時代でした。
作詩は、おなじみ保富"ロマンちっく"康午センセイで、さすがにこうしたヒューマンなドラマの主題歌にはうってつけである。
しかし、「走れ！青春」は『走れメロス』という作品の内容に反して結構ネガティブな感覚の歌詞で意外である。
作曲は、演歌でも有名な浜圭介氏だけに、メロディも歌謡曲調でちょっとシックで抑えた感じである。当時のささきいさお/佐々木功氏の楽曲はどれもこのような良く言えば大人の、悪く言えば地味なバラード系のものが多く、アニメファンがアニソンに期待するような明朗な快活さや爽快感といったものが少ない。
『走れメロス』の作品自体も子供向けにいろいろな形で映像化されており、その度に様々な劇伴や主題歌が付けられており、そのうちのいくつかは耳にしている。どちらかというと子供向けにヒーローソング風の歌が付けられていたから、この「走れ！青春/友よ友よ」には正直、最初戸惑った。
アレンジは、寺尾聡の「ルビーの指輪」やＣＭでも有名な井上 鑑氏によるもので、なるほどシックながらもアコースティックな感覚に仕上げてあり、おかげでスマートな仕上がりだ。
しかし、佐々木功氏の持ち味はこのような地味で起伏の少ない歌ではイマイチ出て来ないようだ。時代のニーズとスタッフの思惑と佐々木氏の指向性に少しづつ違いが出て来たような気もする。ちょっと迷いもあるんじゃないだろうか。

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