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「一行詩「家族!」父よ母よ・息子よ娘よ」 吉村英夫:撰著
投稿日 : 2007/09/21 16:21
投稿者 久保田r
参照先
 長い間、三重県立津東高校で国語の教師を勤めていた作者が、授業の一環として取り組んでいた「一行詩」を1冊の本にまとめたもの。10年以上に渡る膨大な量から作者がテーマ別に撰集。「父よ母よ」は、子どもから親へ向けた「一行詩」。「息子よ娘よ」は、親から子どもへ向けた「一行詩」。

 この取り組みは、高校生に限らず全ての年齢に適用できる有効的な取り組みだなぁ…と思った。ようやく字を書けるようになった幼児〜ペンを握って字を書くことの出来るあらゆる年齢まで有効だと思う。亡くなった父よ母よへ向けてもいいし、社会的にはいい大人になった息子よ娘よへ向けてもいい。「一行詩」だから、言いたいことをほんの一言書くだけで完成する。そのピンポイントで書かれた本音に、読む方は大いに共感すると思う。

 ここで大事なのは、子と親の間に公正な第三者が介在して「一行詩」を呼びかけることが大事。子と親の二者間だけでのやりとりでは、本音というのが見え難いので、あくまでも第三者が間にいて、匿名で書くということが大前提。そうしないとこの「一行詩」の本領が発揮しない。不思議なもので、匿名であっても親は自分の子の書いたものがどれか分かるものらしいし、同様に子もどれが自分の親が書いたものか分かるものらしい。普段憎まれ口を叩きあっている間柄でも、やはり「血は水よりも濃し」というかけがけのない家族の絆がこの「一行詩」によって表れる。

 本書には作品の他に作者による「一行詩」の説明や、長年の取り組みから得られた感想などが書かれている。これを読むと、「一行詩」の取り組みから得られる喜びといったものが感じられる。コミュニケーションの喜び。人にはそれが必要なのだということが。

 最後に私が最もウケた一篇を紹介。

 「息子よ!おかえり。おそくまで塾、ご苦労さん。お腹すいたやろ。…ここに、おうどんあるけど、これはお父さんの夜食やで、食べたらあかん。母は明日早いので先に寝ます。…世の中は甘くないからね」

 塾帰りの息子を労っているところは「母」。家族の為に働いているお父さんを立てて夜食を作っているところは「妻」であり「女」。そして、明日早いので先に寝ますという母の都合があって、世の中は甘くないからねという人生の「先輩」からの厳しい教えの一言。この短い文の中に一人の人間の様々な顔が見えている。素晴らしい。

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