1989年6月20日　朝日文庫

　写真家、秋山庄太郎さんが撮り貯めた昭和の美女芸能人のポートレートを収録した文庫サイズの写真集。写真の合間に芸能評論家の加東康一さんとの「昭和の美女を語る」と題した対談があり、写真の後のページには、加東康一さんの「昭和時代を象徴した女たち」と題したテキストと、秋山庄太郎さんの「我が心の内なる昭和美人史」と題したテキストと、巻末には「戦後主要芸能年表」が収録されており、昭和20年8月15日の玉音放送〜昭和64年1月8日の元号が「平成」に──までが記されている。

　写真に登場する「昭和の美女」は総勢129人で、一部を紹介すると、原節子、高峰秀子、高峰三枝子、ジプシー・ローズ、有馬稲子、若尾文子、京マチ子、白川由美、小川真由美、岩下志麻、星由里子、司葉子、江波杏子、松岡きっこ、吉永小百合、三田佳子、十朱幸代、大原麗子、加賀まりこ、いしだあゆみ、浅丘ルリ子、野際陽子、山本リンダ、松坂慶子、多岐川裕美、桜田淳子、志穂美悦子、ハニー・レイヌ、萬田久子、浅野温子、夏目雅子、樋口可南子、桃井かおり、後藤久美子、斉藤由貴、浅野ゆう子、本田美奈子、菊池桃子、原田知世、岡田有希子、山口百恵、松田聖子、南野陽子、山田五十鈴などなど…。

　写真は全て白黒で、戦後すぐの頃から活躍している映画スターをはじめ、スター誕生などから生まれたアイドルスターまで、幅広い年齢の女性芸能人が笑顔を中心に収まっている。中にはヌードもあり。

　昭和の前半の時期に撮った写真は、腰から上の上半身のものが多く、女優のイメージを形づけるコンセプトのあるポーズがそれぞれに決まってあってなかなかに見応えあり。写真のコントラストがはっきりとしているため、女優の”目力”が伝わって来る迫力のある写真となっている。

　アイドルが台頭する昭和後半の写真は、笑顔のアップ写真が多め。ソフトフォーカスを使用した写真が多く、柔らかな雰囲気の写真の中でかわいいアイドルたちが微笑んでいる。

　秋山庄太郎さんは、花の写真を数多く撮っていた方でもあり、女性芸能人のポートレートから花へと、ひたすら美を追求する写真を生涯撮り続けた一途な写真家でいらっしゃったと思う。一つの道を極めるため生涯かけて続けるのは至難なこと。昭和を代表する美女を撮り続けた秋山庄太郎さんの美のセンスと感性を伺い見ることのできる写真集。

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