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「大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]」
投稿日 : 2024/02/12(Mon) 16:25
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:金子文紀
エグゼクティブプロデューサー:豊島雅郎、濱名一哉
プロデューサー:荒木美也子、磯山晶
原作:よしながふみ
脚本:神山由美子
撮影:山中敏康
美術:小出憲
照明:椎原教貴
VFXスーパーバイザー:小坂一順
編集:松尾茂樹
音楽:村松崇継
音楽プロデューサー:志田博英

<出演>
堺雅人/菅野美穂/尾野真千子/柄本佑/田中聖/要潤/桐山漣/竜星涼/満島真之介/椿鬼奴/木野花/市毛良枝/榎木孝明/由紀さおり/堺正章/宮藤官九郎/西田敏行、他

2012年 松竹
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Re: 「大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]」
投稿日 : 2024/02/12(Mon) 16:32
投稿者 久保田r
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 男女逆転「大奥」を描いたコミックを実写化した3作目。1作目は、第8代将軍徳川吉宗と御中臈の水野とのエピソードを映画化。2作目は、初の女性将軍誕生となった第3代将軍徳川家光と初の大奥総取締となった有功との出会いから別れまでをTVドラマ化(全10話)。3作目となる今作は、第5代将軍徳川綱吉と京から側室候補として大奥入りしたものの大奥総取締となった右衛門佐との出会いから別れまでを映画化。3作とも監督は金子文紀さん。また、京から来た右衛門佐は容姿がかつての有功とよく似ていることから、両役とも堺雅人さんが演じられている。

 ズバリ!右衛門佐と綱吉の純愛に特化している内容。右衛門佐は、京にいた頃はお家の台所事情のため夜な夜な子を欲す女性のもとに通い詰める日々を送っており、一方の綱吉は世継ぎには松姫がいたものの世継ぎ候補を産むために夜な夜な男性を取っ替え引っ替えしては閨を共にする暮らしを送っていた。そのような二人が大奥という場所で出会い、プライドの高い右衛門佐は側室に収まるような男ではなく、大奥の頂点に立つことで肌を合わさずとも末長く綱吉の側に就く権力を求めた野心家。綱吉にとっても右衛門佐のような男は初めてで、望むままに大奥総取締の座を与え、それによって綱吉の父、桂昌院と右衛門佐との間に確執が生じ、ますます世継ぎを産むことのみに専念せざるを得なくなっていく様が描かれている。

 そのため、ほとんどが大奥でのシーンとなっていて綱吉が政に携わったシーンは数少ない。いきなり美作とその息子に死罪を申しつけた他は、歴史に名高い悪法「生類憐みの令」を出したぐらい。これ以外は、大奥での愛欲の日々といったところ。このような綱吉の生き様には、父、桂昌院の存在が大きく、幼くして母、家光を亡くした綱吉にとって父の言うことは絶対であり、大事にしなければならない存在。桂昌院もまた綱吉を大事にするがあまり道を踏み外してゆく。

 そのような中で右衛門佐は、世継ぎを儲けるための役目と綱吉を守る役目を通し続ける。しかし急死した松姫に代わる世継ぎは一向に産まれず、無残に時は流れてゆき、積もり積もった民の憎悪が綱吉に向かった夜、ついにふたりは結ばれる。ここに至るまでの過程で幾度となくその機会はあったにも関わらず、安易な肌の触れ合いに価値を見出せなかった右衛門佐の愛の告白は、痛々しいほど純愛のそれであった。故に、綱吉はこれまで目に見えぬとも己の体に殻のように貼り付いていた父親の支配を脱ぎ捨てる。時すでに遅くともようやく綱吉は愛しい人と巡り会えた。

 右衛門佐と綱吉の関係に絞ったことで、綱吉の悲しいまでの生き様と右衛門佐の人柄とがよく伝わる脚本となっていたと思う。原作にあった印象的なエピソードが盛り込まれ、映像の構図も原作を再現しているため、性の表現という意味でなかなかにスリリングな内容をしっかりと起承転結を持って描かれていたと思う。惜しむらくは、せっかく堺雅人さんが有功と右衛門佐を演じているのだから、原作にあった老いた有功と桂昌院が再会するシーンを見てみたかった。

 閨のシーンが多いため、綱吉を演じた菅野美穂さんの体を張ったシーンが多い。見ているうちにしだいと菅野美穂さんの度胸の良さに惚れ惚れとしてしまう。20歳の時に出版した写真集「NUDITY」で見せたあの度胸と覚悟を思い出した人もきっと多いのではないだろうか。

 追記。
 公開から数年の時を経てやっと鑑賞する心境になれた。実はDVDリリース後に鑑賞しようとしたものの、折しもこの作品での共演をきっかけに堺雅人さんと菅野美穂さんが結婚したことを知り、色眼鏡で見てしまうことを恐れて長い間意識的に避けてきた。だが、鑑賞してみて納得。おふたりはきちんと原作の世界観を演じていた。
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