「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」
投稿日 | : 2002/05/07 23:04 |
投稿者 | : Excalibur |
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全世界で大ヒットを飛ばした『スター・ウォーズ』。この作品に続編が作られることはかなり早い時期から情報が流れていたが、ではその内容は?となると製作サイドのガードは固く、ファンの間ではああでもないこうでもないと無責任な噂が飛び交っていた。にしても、ここまで暗く重い作品になると予想していた人はどれくらいいたのだろうか。
とにかくこの作品はショックだった。前作で描かれたハッピーエンドは、冒頭でいきなり否定される。帝国軍に対して勝利を収めたはずの反乱軍は一転して窮地に立たされ、題名通り帝国は圧倒的な力でもって復活。ルーク、レイア、ハンの三角関係は更に複雑に絡まり合い、挙句の果てにルークにとっては父の仇であるはずのダース・ヴェイダーの口から「私がお前の父だ!」という衝撃発言が飛び出す始末。ルークもハンも精神的肉体的にボロボロの状態でエンディングを迎え、新たななぞが提示され未解決で終わる。主人公たちとの再会を楽しみにして来た観客たちは、その歓びも束の間、引き裂かれ大きく翻弄される彼らの運命をただ呆然と見つめるのみ。これが、あの、楽しい大冒険活劇『スター・ウォーズ』の続編なのだろうか――?
初めて見た時の印象が強烈すぎたせいか、この作品は今もって好きにはなれない。人間ドラマが描けているからと評価する声も大きいが、その一方で「半分ほど大人になりかけた少年や、まだ半分は子供でいる大人へ」を対象にした第一作の、素朴な、そして問答無用の楽しさが失われたのは事実だろう。次なる『ジェダイの復讐』へと連なる<三部作>のブリッジとしてのみ評価に値する、と言ったら言い過ぎだろうか。
シリーズの分岐点
投稿日 | : 2005/11/14 22:05 |
投稿者 | : Excalibur |
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この作品で最大のトピックスは、ダース・ヴェイダーがルークに語る「私がお前の父だ」という台詞だろう。多くの観客が驚いただろうし、かなり唐突に感じられる台詞でもある。
なぜならば『新たなる希望』ではオビ=ワンが、「私の弟子にダース・ヴェイダーという若い騎士がいた。奴が裏切ってお前の父親を殺したのだ」と言っていたからである。
後の『ジェダイの帰還』では、「善良だったアナキン・スカイウォーカーは、暗黒面に囚われてダース・ヴェイダーとなってしまった。その時アナキンはヴェイダーに殺されたのだ、見方を変えれば」と弁明しているものの、これは如何にも苦しい。
それもそのはず、当初は”ヴェイダー=ルークの父親”という設定はなかったからなんである。
『帝国の逆襲』の草稿段階では、ヴェイダーとは別にルークの父親が出て来ている。
ヨーダ(という名前ではないが)の元で修行中のルークの前に、霊体となったオビ=ワンに伴われて父親の霊体も姿を見せるのだ。
そして重要なことを告げる。「お前には妹がいる」と。
この妹の名前は「ネリス・スカイウォーカー」。
もちろんレイア・オーガナとは何の関係もない。つまり”レイア=ルークの妹”も後付け設定なのである。
そもそもこの頃は「ルーク20歳」「レイア18歳」という設定が出回っていたんだっけ。双子で2歳も年が離れているわきゃないんだし。
ただ最終的にはネリスとレイアの設定は一本化され、これがダゴバでのオビ=ワンとヨーダの遣り取り(「あの子が最後の希望です」「いや、もう一人おる」)と、終盤のベスピンでのルークの呼び掛けに感応するレイアという形で次回作へ伏線を張るようになっていった。
後付けといえば本作で初登場するジェダイ・マスターのヨーダ、彼も当初から設定されていたキャラクターではなかった。
そもそも『新たなる希望』でオビ=ワンは死ぬ予定ではなかったのだ。
ただ後半では出番がなくなってしまうため、物語上のアクセントをつけるため(オビ=ワン役のアレック・ギネスの提案とも言われている)ヴェイダーに殺されるように変更されたのだ。
そのため本作ではルークの修行を続けさせるための新たなキャラクターが必要となり、そこで生み出されたのがヨーダというわけである。
こうしてみると、全作が綿密に構成されている、と一般には喧伝されているはずの『スター・ウォーズ』というシリーズが、意外に行き当たりばったりで作られていたことがわかるだろう。
ただ、だからと言ってシリーズがつまらないということではなかったのが凄いところで、これは天の配剤とでも言えば良いのだろうか。
作品データ