「或る剣豪の生涯」
投稿日 | : 2000/12/24 21:02 |
投稿者 | : Excalibur |
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戦国時代を舞台に、かのロスタンの『シラノ・ド・ベルジュラック』を翻案したものであるが、これを見たときはまだ『シラノ』の何たるかをまるで知らず、大いに感銘を受けた。
原典に則して記せば、剣の腕は超一流、また弁舌巧みな詩人でありながら、大きすぎる鼻にコンプレックスを持ち、それ故に幼い頃から想いを寄せている女性への恋心を秘し、恋敵である若い武士に協力して黒子に徹する、というシラノの役どころが三船敏郎。その憧れの姫ロクサーヌが司葉子。ロクサーヌの恋人となるクリスチャンが宝田明、となる。
正直に言えばこの作品の面白さは原作の面白さであり、またそれを巧く消化しているとも言い難い。剣の腕は立つが女性に対して不器用というキャラクターは確かに三船にハマるが、美辞麗句を並べて女性に愛を語る、というシチュエーションは時代劇には似つかわしくなく、三船本人も窮屈そうだ。ただ、流石に「漢」を感じさせる演技であることは特筆してよかろう。また、司葉子の美しさも際立つ。剣豪が惚れた女性としての説得力が無ければ、この物語は成立しえないからだ。しかしながら個人的にはこのロクサーヌが、女性としての理想像だとはどうにも思えないのだが。
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