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「仮面の男」
投稿日 : 2001/01/05 23:10
投稿者 Excalibur
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アレクサンドル・デュマ『ダルタニャン物語』第三部「ブラジュロンヌ子爵」の中から、「鉄仮面」にまつわるエピソードを抽出して映画化。日本ではこの手のコスチューム・プレイは当たらないと敬遠されがちだが、『タイタニック』公開後というタイミングの良さからヒットに繋がった。恐るべしはレオナルド・ディカプリオのパワー、というよりレオ・ファンの女の子のパワーと言うべきか。
但し、ルイとフィリップの双子を演じたディカプリオの頑張りよりも、映画を見終わって印象に残るのは、脇を固めるダルタニャンと三銃士たち。事実上の主役であるダルタニャン役のガブリエル・バーンが特に光っている(原作を想定するならばバーンではかなりイメージが違うが、この作品では原作にはない設定を与えられ、役回りが大きく変化した新たなるダルタニャン像には見事にハマっている)。他にも、何か裏のありそうなアラミスのジェレミー・アイアンズ、実直なアトス役ヨン・マルコビッチ、それに天然児そのものといえるポルトスを演じたジェラール・ド・パルデューといった渋い面々が揃っているが、バーンには一歩譲る感じだ。ただ、フランス文学の傑作の映画化にしては、フランス人俳優がド・パルデューだけなのは少し寂しい。
メル・ギブソン監督・主演の『ブレイブハート』の脚本も手掛けたランダル・ウォレスは宗教や歴史に造詣が深いようで、『三銃士』の映画化というより、自分なりの『三銃士』物語の構築を目論み、原作とは様々な部分で異なる独自の解釈、設定を盛りこんでいる。
ルイとフィリップの出生の秘密にダルタニャンを絡ませたり(余談だが原作ではフィリップが兄、ルイが弟であるが、本作では何故か逆になっている)、ラウルとクリスティーヌ(原作のルイーズ)のエピソードをあっさりとまとめたり、フーケやシュヴルーズ夫人ら重要な人物を割愛したり、と枚挙に暇がないが、最大の改変はやはりルイとフィリップに訪れる結末が、原作とは全く逆であることだろう。これにより幾分かハッピーエンドになったのはハリウッド風と言えるが、原作の持つ独特の香り、重み、悲劇性といったものが損なわれてしまったのはどうだろうか。
ただ「仮面の男」とはフィリップのことではなく、心に仮面をつけていた(と解釈される)ダルタニャンである、とする映画の流れからすれば、この改変は一貫性を持ったものだ、との断言は出来る。フィリップに感情移入して見ていた観客には違和感ないだろう。
本作の音楽担当者はハンス・ジマー一派のニック・グレニー=スミス。ロックとオーケストラの融合と史劇との組み合わせは一見ミスマッチ風であるが、画面とは違和感なく調和。マイナーな旋律とリズム感に共感を覚えた人が多いのか、この曲を選んでるフィギュア・スケートの選手が多かったのも記憶に新しい。
ところで、『三銃士』といえば、「All for one」「One for all」の名セリフは避けて通れないところであるが、字幕では「我らは銃士」「結束は固い」と訳されている。これはちょっと納得がいかない(因みに吹替版ビデオでは「我らは一つ」「栄光の銃士」というセリフであった)。もうひとひねり欲しいところである。
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作品データ
投稿日 : 2001/01/28 10:33
投稿者 Excalibur
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監督・脚色:ランダル・ウォレス
製作総指揮:アラン・ラッドJR.
製作:ランダル・ウォレス、ラッセル・スミス
音楽:ニック・グレミー=スミス

レオナルド・ディカプリオ
ジェレニー・アイアンズ
ジョン・マルコヴィッチ
ジェラール・ドパルデュー
ガブリエル・バーン
アンヌ・パリロー

1998年
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