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「あおげば尊し」
投稿日 : 2008/06/02 18:18
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:市川準
製作:松田眞美子
プロデューサー:鍋島壽夫
原作:重松清「あおげば尊し」(新潮社刊「卒業」より)
脚本:市川準
撮影:小林達比古
美術:山口修
音楽:岩代太郎

<出演>
テリー伊藤/薬師丸ひろ子/絵沢萠子/大倉孝二/入江雅人/麻生美代子/加藤武、他

<ストーリー>
小学校の教師を勤める光一は、末期ガンの父の最期を自宅で看取ることにした。そんな折、光一の受け持つクラスに「死」に対して深い興味を持つ男子生徒が現れ、光一は、生徒たちに父の姿を見せることを決意する。

2006年 テンプリント=スローラーナー
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Re: 「あおげば尊し」
投稿日 : 2008/06/02 18:19
投稿者 久保田r
参照先
 斜視の手術を受ける前のテリー伊藤が主役を務めている映画。作中で生徒から「どうして先生の目はそうなの?」と質問を受けるシーンがあり、教師役のテリー伊藤が「昔、大けがをしてなった。こういう目でも便利なことがあるんだぞ」と答え、作品のテーマである”生きる”ということを綺麗ごとではなく俳優の姿を通しきちんと正面から描いている作品。

 冒頭からしばらくは、小学校の中の様子が映し出され、小学生の生活態度や教師の様子といったものがドキュメンタリータッチで映し出されている。平行するように末期ガンの光一の父親を在宅で看取ることになり、病院から自宅へ帰って来る様子が映し出されている。

 映画作品なので、ドキュメンタリーではないのだけど、”現代の死”というものをできる限り脚色せずにリアルに近い視点で描いていて、全体的にドキュメンタリーに近い感覚のする作品。もちろん”死”はもっと厳しいものだと思うが、主役をテリー伊藤ではなくもっと演技の上手い俳優が演じていたとしたら、作り込まれ過ぎた作品になったと思われるので、キャストの妙が活きている作品だと思う。

 「死」に興味を持つ少年は、5歳の時に亡くした父の葬儀の記憶が抜け落ちており、自分の中できちんと父と別れができずにいて斎場に現れては亡くなった父の痕跡を探し求めた。担任の光一は、始めのうちは単に「やめろ」とだけ言っていたが、それだけでは少年の興味は止まらず、光一は床に臥している自分の父の姿を少年に見せ続けることで少しずつ少年の心の内が見え、ようやく少年は父の葬儀の時の記憶を取り戻し始める。これは、光一の父の最後の授業となった。

 作中では、教師の姿がシビアに描かれており、理想の欠片もないが、教師もまた始めから答えなど持たずに迷いながら教職に就いていることを描いている。光一の父は嫌われ者の教師だったが、葬儀には教え子が集まり、出棺時の「あおげば尊し」の合唱に思わず涙した。感動させようと意図して作られた作品ではないだけに”生涯一教師”の光一の父の姿が心に染みた。

 エンディングの教師をしていた頃の光一の父の後ろ姿の映像が良かった。妻役の麻生美代子さんと光一の妻役の薬師丸ひろ子さんが、さりげなく家族の有り様と温もりを示していて良かった。
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