「エロス+廃墟」
投稿日 | : 2006/11/28 14:26 |
投稿者 | : 久保田r |
参照先 | : |
<スタッフ>
監督:田中昭二
製作総指揮:浅井隆
プロデューサー:鎌田英嗣、直井卓俊、田中昭二
脚本:田中昭二
撮影:平尾徹
編集:田中昭二
スチール:中筋純
音響効果:荒井明子
脚本協力:北原童夢
人形:清水真里
撮影協力:マインランド尾去沢
<出演>
江口ナオ
2004年 UPLINK
Re: 「エロス+廃墟」
投稿日 | : 2006/11/28 14:27 |
投稿者 | : 久保田r |
参照先 | : |
「取り残された私が──取り残された風景と出会う──」
全体的な流れは、都会的な美しさの女性が、廃墟に魅せられ少しずつ近づいて行く。廃墟に入る手前で携帯電話が鳴り、彼女はその携帯電話を踏みつけて壊す。そして、廃墟の内部へと入って行き、彼女は少しずつ都会的な表情を剥いでいき、自身を覆っていた服をも脱ぎ捨てる──。…という流れ。終始、物憂げな表情で見上げながら歩いているので、彼女と共に廃墟を散歩している気分にもなるし、一歩引いたカメラワークは、廃墟を彷徨う美しい女性を客観的に鑑賞する愉しみも映し出している。
いわゆる官能的イメージ映像の連続で、登場人物は女性一人で、台詞という台詞はなく、時折彼女のモノローグが入る他は、退廃的な美しさの音楽が流れる中での廃墟の中を歩き廻る美しい女性を観るという映像になっている。派手な爆発シーンやアクションシーンなどはなく、廃墟の中で少しずつ変化していく彼女の表情こそがこの映画の起承転結で、裸体に何も纏わず官能的に歩き尽くす彼女の姿こそが、この映画のクライマックス。廃墟と裸婦というこの作品が目指した絡みを見ることができる。
廃墟というのは、どことなく人心を惹き付ける建築物の成れの果てであるが、その内部と女性とを絡ませるのは、一つの「性」の深部の表現であるように思う。深い緑色の草木が生い茂り、かつて多くの人が行き交った建物を覆い尽くす。その中に潜り込む一人の美しい女性。映像は、どこまでも深みのある綺麗なコントラストで女性を映し出し、しばし映像美の奥へと誘う。監督の感性なのか、それとも演ずる女性の感性なのか、ともかく廃墟の中を官能的に歩く女性を篤と堪能することができる作品。