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「待合室 -Notebook of Life-」
投稿日 : 2010/05/06 17:04
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:板倉真琴
プロデューサー:勝亦重久、高田和浩、吉野美鈴
製作総指揮:小田原雅文
脚本:板倉真琴
撮影:丸池納
美術:鈴木昭男
音楽:荻野清子
主題歌:綾戸智絵「Notebook of Life」

<出演>
富士純子/寺島しのぶ/ダンカン/あき竹城/斉藤洋介/市川実和子/利重剛/楯真由子/桜井センリ/風見章子/仁科貴、他

<ストーリー>
岩手県一戸町にある小さな駅「小繋駅」には、ここに訪れた人が思い思いに書きしたためるノートがある。ノートには、旅の思い出や絵や落書きなど様々なことが綴られてあり、中には生きる望みを失った人の誰にも言えない心の叫びが綴られていることもある。駅の向かいで小さな商店を営む女性、夏井和代は、本人が読む確証もない返信を書き続けていた。

2006年
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Re: 「待合室 -Notebook of Life-」
投稿日 : 2010/05/06 17:08
投稿者 久保田r
参照先
 実話をもとに作られた、小さな田舎町に住む一人の女性の人生を描いている作品。岩手県一戸町にある小繋駅には、「命のノート」と題されたノートが置いてあり、全国各地から訪れた人々が思い思いのことを書き綴り、時には生きる望みを失った人の孤独な心の叫びまでもが記されてあり、駅の向かいにある商店をたった一人で切り盛りしている初老の女性、夏井和代は、書いた本人が再びこの駅へ来てノートを読むという確証もないまま励ましの返事をしたため続けている。

 田舎の暮らしは単調の繰り返しで、行き交う車の音や1日に何本か通る列車の音、そして自然の音に囲まれて暮らす他は、特別な刺激など何もないのが特徴。その何事もないような小さな田舎町で、そこで暮らす人々の人生と、それぞれの思いとを描いている。

 劇的なドラマチックな描写や派手なシーンなど何もない地味な作品であるけれども、だからこそ田舎町で暮らす女性の悲喜交々がリアルに描写されてあり、はっきりとは感情の表現が顔に表れない田舎の女性の人生が作品の中できちんと描かれてあると思った。田舎町で生まれ育った十代の娘の頑な芯の強さと、それとは裏腹に併せ持つ繊細な心情とがドラマの核となっており、田舎で地味に暮らす主人公の夏井和代とのやりとりがリアルに心に染みる作品になっていると感じた。

 見も知らぬ他人の心の叫びに励ましの返事を書き続ける夏井和代は、どんなに心の強い女性かと想像するが、一人娘を幼い頃に亡くし、夫にも先立たれ、嫁いで来たこの地でたった一人で商店を切り盛りする寂しい境遇の女性。過去の辛い体験を通して他人の辛さに共感し、本人が読むあてもないと知りつつもノートに返事を書いてしまうほど、孤独と寂しさとを抱えて生きている女性。ノートが無くなり、心が折れ、実母のもとを訪れたものの帰るように勧められ、その帰りの列車の中で母の手作りのおにぎりをほおばるシーンが、この作品の全てを物語っていると思った。

 取り残されたように帰って来た小繋駅で、無くなった筈のノートが元通りに戻っているのを見つけた和代は、心から安堵の喜びを表していた。「命のノート」は、和代にとっての「命のノート」であるとしみじみと伝わる感動のラストシーンだった。

 追記。
 主人公、和代の若い頃を演じているのは、主役の富士純子さんのご息女であり、先日、2010年ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した寺島しのぶさん。
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