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「アナザー・カントリー」
投稿日 : 2012/01/12 17:01
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:マレク・カニエフスカ
製作:アラン・マーシャル
製作総指揮:ロバート・フォックス
原作:ジュリアン・ミッチェル
脚本:ジュリアン・ミッチェル
撮影:ピーター・ビジウ
音楽:マイケル・ストーン

<出演>
ルパート・エヴェレット/コリン・ファース/ルパート・ウェンライト/マイケル・ジェン/ロバート・アディ/トリスタン・オリヴァー/ベッツィ・ブラントリー/アンナ・マッセイ/ケイリー・エルウィズ/ジェフリー・ウィッカム、他

1983年
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Re: 「アナザー・カントリー」
投稿日 : 2012/01/12 17:02
投稿者 久保田r
参照先
 ソ連のとある家にジャーナリストらしき女性が訪ねる。インタビューに応じる老人は、スパイ活動の話しの代わりに自身が卒業した1930年代のイギリスの全寮制の学校生活でのことを話し始める。下級生から上級生まで全て男子のみの全寮制の学校の生徒であったガイ・ベネットは、共産思想を持つ友人ジャドの影響を受けながらも、次の代表となることに闘志を燃やしていた。ガイは、同性愛嗜好があり、幾人かと関係を持っていたが、別の寮のジェームズ・ハーコートに心を奪われ、いつしか二人は夜中に逢うようになる。

 老人の過去を振り返るという出だしではあるが、メインは30年代のイギリスの男子校の寮生活。美丈夫なガイは、ガチガチの体制派ではなく、若者らしい奔放さを持った青年で、自然と人の目を引く人物。人の上に立つ風格を持ち合わせており快く思わない者との確執もあった。次の代表となれれば将来は約束されたも同然であったが、ジェームズ・ハーコートとの関係をそういった連中に知られ、ガイのプライドは打ち砕かれ、ガイは共産主義へと傾倒して行く…という内容。

 学校の寮という限られた人間たちと空間の中で数年を過ごす若者たちの抑圧された独特の空気感というのがよく表れていて、息苦しくもありながら、閉鎖された空間内で起こる出来事の数々が、すれすれの色気を持って描写されている作品という印象を抱いた。バロック絵画のように激しい明暗比が、寮の中をドラマチックに映し出しており、室内の暗さと屋外の明るさの対照が、ストーリーの展開と共に変化してゆく若者たちの心情をも表しており美しい映像作品だった。

 カメラの動きが繊細で、特にガイの”恋心”を捉える映像が綺麗で良かった。広場で「ジュピター」を合唱しているシーンで、ジェームズ・ハーコートを見つめるガイの視線に合わせたカメラの動きが最高。寮の中から外を歩くジェームズを見つめるガイの視線の優しさ。夜中に月明かりの中でボートの上で寄り添う二人の穏やかな時間。といったものが美しく切なく映しとられている。心地よい映像美。

 シーンの切り取りと繋ぎが、寮生活のそこにしかない空間と時間を作り出していて、一種の憧憬をも感じる世界観が映し出されていて美しかった。過激なシーンなどはなし。だが、台詞に力があり、映像で訴えるものがある。心に残る作品。
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