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「棚の隅」
投稿日 : 2012/02/09 15:32
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:門井肇
企画統括:小池和洋
原作:連城三紀彦『棚の隅』(『日曜日と九つの短篇』所収)
脚本:浅野有生子
撮影:鈴木一博
音楽:延近輝之
主題歌:榊いずみ『つまらない世界』

<出演>
大杉蓮/内田量子/渡辺真起子/榊英雄/今井悠貴/徳井優/今宿麻美/江道信、他

2007年
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Re: 「棚の隅」
投稿日 : 2012/02/09 15:33
投稿者 久保田r
参照先
 連城三紀彦さんの同名短編小説を映画化した作品。主人公の宮田康雄は、とある商店街でおもちゃ屋を営んでいた。ある雨の日、一人の中年女性が来店し、半額セールの棚から車のプラモデルを一つ半額前の値段で買って行った。その女性は、康雄の別れた妻、擁子だった。その日から康雄の胸中は穏やかではなく、擁子は足しげく康雄の店の前に現れるようになり、康雄の現在の妻にその存在が知れるようになって行く。そして、康雄は遂に決心をする。

 大杉蓮さんあってこその作品。客足の少ないおもちゃ屋の主人という、くたびれた中年男性の諸々の悲哀さを全身を使って演じており、一つ一つの仕草の間合い、重苦しい空気の中での会話の間合いといったものが、絶妙な間で演じられている。作品の空気と世界観が、大杉蓮さんの演じる宮田康雄を中心に生み出されているため、作品の中に生きる登場人物の人生の一過程が丁寧に演じられている。

 映像の雰囲気は、昭和テイスト。やや絡み付くようなカメラ目線に、ややベタなカット割り。最近のアクティブな映像に慣れているとなんとも静的なカメラワークであるが、じっとカメラを据えて役者の動きを捉えている映像は、登場人物の心の内までもを撮影しているようで、映像に惑わされない人間ドラマを見ることができる。落ち着いて鑑賞できる短編作品といったところ。

 小説が原作のためか装飾的な台詞などがなく、説明的な台詞までもが最低限しか入っていないので、まるで行間で物語っているかのような内容の作品で、全体を把握するのに多少時間を要するが、台詞の間合いと役者の演技の間合いからストーリーを想像して読み解いていくという全体の流れは、文学的な雰囲気を醸していてよかったと思う。

 しかし、出来ることならもう少し人物の背景描写があればよかったかな…とも思う。特に別れた妻の性格的な描写。赤ん坊を置き去りにしたその背景と、プロポーズしてくれた男性に対し「優し過ぎて残酷」と返答した擁子の性格的な描写があるともう少しバランスがよかったようにも思う…が、その部分を想像するのも見る側の感受性しだい…といったところなのかも知れない。
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