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「私は貝になりたい」
投稿日 : 2014/07/16(Wed) 15:20
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:福澤克雄
プロデュース:瀬戸口克陽
エグゼクティブプロデューサー:濱名一哉
プロデューサー:東信弘、和田倉和利
原作:加藤哲太郎「狂える戦犯死刑囚」
脚本:橋本忍
撮影:松島孝助
特撮監督:尾上克郎
美術:清水剛
音楽:久石譲
主題歌:Mr.Children「花の匂い」

<出演>
中居正広/仲間由紀恵/柴本幸/西村雅彦/平田満/マギー/加藤翼/武田鉄矢/伊武雅刀/片岡愛之助/名高達男/武野功雄/六平直政/荒川良々/泉ピン子/浅野和之/金田明夫/山崎銀之丞/梶原善/織本順吉/草なぎ剛/笑福亭鶴瓶/上川隆也/石坂浩二、他

2008年 東宝
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Re: 「私は貝になりたい」
投稿日 : 2014/07/16(Wed) 15:21
投稿者 久保田r
参照先
 1958年にフランキー堺さん主演で製作された名作ドラマを中居正広さん主演で映画化した作品。1994年には所ジョージさん主演でリメイクしたドラマを放送している。当劇場版は、1958年にオリジナルの脚本を書いた橋本忍さんが、初めて自身の脚本の改訂を行って作られたもの。なお原作は、自らも巣鴨プリズンに勾留経験のある加藤哲太郎さんの「狂える戦犯死刑囚」。

 時は、昭和19年、第二次世界大戦中のこと。片方の足が悪い清水豊松は、駆け落ち同然で一緒になった妻の房江と幼い息子の憲一と、高知県幡多郡清水で理髪店を営みながら睦まじく暮らしていた。ある日、豊松のもとに召集令状の赤紙が届く。家族と離れて厳しい訓練を続けていた清水のいる部隊に、山に降下したB-29の搭乗員確保の命令が下り日高中隊は一斉捜索へと赴いた。発見されたアメリカ兵は木に縛り付けられ、清水と滝田に銃剣で刺すよう上官から命令が下る(大北山事件)。終戦後、清水は家族のもとへと戻って再び理髪店を営むも、突如MPがやって来て清水を戦犯容疑で強制連行する。

 赤紙一枚で召集され戦争に巻き込まれた一市民の悲しい人生のドラマ。ただただこれに尽きる感想。泣けて泣けてしようがないというほどではないが、家族と引き離される悲しみや、愛しい家族への思い、死への恐怖といったこれらのことが清水豊松という一人の人物を通して切々と描写されている。

 監督がTBSのドラマ・ディレクターであり今作が映画監督デビュー作に当たるためかドラマ的手法を感じる作品となっているが、スケール感を補うように壮大に音楽が鳴っているのが印象的。美しいメロディーがシーンを包み込むように響いており、時の経過を表す移り変わる四季の風景の映像と共に作品全体のイメージ作りを担っている。

 私は、たまたま見た1994年の所ジョージさんが主演したドラマの後半部分の印象を覚えていて、暗い悲しみのイメージと「私は貝になりたい」の台詞がずっと頭に残っていた。今回劇場作品を見て感じたことは、主人公を演じる役者によって作品の印象が少し変わる…ということを感じ取った。中居正広さんは主人公の人の善さと気の弱い人物像を好演されていたが、どのシーンでも中居さんの持ち前の性格の明るい部分が窺え、今一歩悲しみのどん底まで届いていないような感じを受けたのがいささか気になった。また、中居さんと交友のある役者が顔を揃えているのも気になった点。豪華出演陣で流石”ドラマのTBS”といったところではあるが、ここは敢えて中居さんと交友のある役者は外すなどの追い込み感が欲しかったところ。何しろ理不尽に戦争に巻き込まれた主人公の深い悲しみを描いているのだから、追い込まれた孤立感から生まれる表現力をぜひ見てみたかった。

 「私は貝になりたい」という言葉は、ある意味哲学的で含蓄がありそうな吸引力が宿っている。この言葉から色々な物語を想像するが、作品を見ると自分が想像したどれでもないドラマが広がっている。それもまた戦争が生んだ悲しみなのだと感じ取った。
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