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「あん」
投稿日 : 2015/07/31(Fri) 16:13
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:河瀬直美
プロデューサー:福嶋更一郎、澤田正道、大山義人
原作:ドリアン助川「あん」
脚本:河瀬直美
撮影:穐山茂樹
美術:部谷京子
編集:ティナ・バス
主題歌:秦基博「水彩の月」

<出演>
樹木希林/永瀬正敏/内田伽羅/市原悦子/水野美紀/大賀/兼松若人/浅田美代子/竹内海羽/高橋咲樹/村田優吏愛

2015年
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Re: 「あん」
投稿日 : 2015/07/31(Fri) 16:15
投稿者 久保田r
参照先
 第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニング上映に選ばれた作品。原作は、ドリアン助川さんの同名小説。粒あん作りの名人であり過酷な人生を送って来た主人公の徳江を演じるのは、樹木希林さん。どら焼き店「どら春」の店長の千太郎を演じるのは、永瀬正敏さん。「どら春」の常連客で中学生のワカナを演じるのは、樹木希林さんの実の孫であり初共演となる内田伽羅さん。

 桜並木の端に佇む「どら春」は、11時開店の小さなどら焼き店。無口で無愛想な店長の千太郎が営んでおり、常連客は近所の女子中学生たち。そのうちの一人、ワカナはいつも”できそこない”のどら焼きを貰っていた。桜が満開に咲く季節のある日、一人の老婦人が「バイトをしたい」と申し出る。千太郎は年齢的に無理だと判断して始めのうちは邪険に接するも、老婦人の置いて行った粒あんを食べてその美味しさに考えを改める。徳江と名乗る老婦人は「どら春」で働き始め、夜も明け切らぬうちから「あん」の仕込みを始めた。徳江の作る「あん」のおかげで店は繁盛したものの、ある夜、店のオーナーが現れて徳江に関するよからぬ噂を告げる。そして別の日、いつものように店でどら焼きを食べていたワカナが徳江に「指、どうしたんですか?」と尋ねる。

 はっきり書くのは憚られるのかネットではほとんど見かけないが、ズバリこの作品はハンセン病感染者である老婦人の晩年を描いたもの。フィクションであるため実話の映像化ではないが、登場人物たちの行動と表情とをドキュメンタリータッチで描くことにより常人の想像を超える老婦人の長年の苦悩と、雇われ店長の千太郎の苦悩と、母子関係の上手くいかない女子中学生のワカナの苦悩とが淡々としたストーリーの流れの中で少しずつ炙り出され、見る者の胸の奥に深く染み入って来る人生ドラマとなっている。

 私はハンセン病のことは名前を知っている程度で、どのような症状であるのか全くと言っていいほど知らない。しかし、社会から隔離されて生きて来たということは新聞などで報じられているのを読んで知っている。現代ではきちんとした治療を受ければ治るこの病気も、昔はただただ隔離することで社会から遠ざけられて来た。感染者の苦悩を計り知ることは決してできないであろう…と痛感した内容だった。

 「どら春」の店長の千太郎は、徳江と出会い「あん」作りを通して自分の抱える人生の辛さと直面した。それは千太郎にとって触れられたくない心の傷であったであろうが、山を乗り越えた時、それは転換期であったことに気づく。女子中学生のワカナは、一風変わった感じではあるけれども中味は少女らしい感性に満ちていた。そんな彼女が徳江の過去を知った時に大人への転換期を知る。三人三様の人生いろいろ。隔離施設にある鬱蒼と茂る木々の理由を知った時、胸の奥がぎゅぅっと締め付けられ苦しくなる。辛く苦い人生を支える甘い「あん」。観賞後、おいしいどら焼きが食べたくなる。
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