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「太秦ライムライト」
投稿日 : 2017/01/23(Mon) 14:23
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:落合賢
製作:コウ・モリ、大野裕之、佐野昇平
協力プロデューサー:浜野高宏
制作プロデューサー:増田悟司
脚本:大野裕之
撮影:クリス・フライリク
美術:吉田孝
編集:洲崎千恵子
キャスティング:増田悟司
音楽:戸田信子
殺陣:清塚三彦
照明:山中秋男

<出演>
福本清三/山本千尋/合田雅吏/萬田久子/峰欄太郎/木下通博/柴田善行/多井一晃/中島ボイル/川嶋杏奈/佐藤都輝子/鷲尾直彦/尚玄/市瀬秀和/穂のか/中村静香/海老瀬はな/仁科貴/風間トオル/中島貞夫/栗塚旭/本田博太郎/小林稔侍/松方弘樹、他

2013年
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Re: 「太秦ライムライト」
投稿日 : 2017/01/23(Mon) 14:27
投稿者 久保田r
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 時代劇の撮影所で有名な「太秦」を舞台にした作品。時代劇を支えて来た人々の生き様を描いている。主演は、東映京都撮影所に所属し「5万回斬られた男」の異名を持つ福本清三さん。監督は、「タイガーマスク」の落合賢さん。

 場所は、時代劇の撮影所として有名な太秦。大部屋俳優の香美山清一は、長年斬られ役として時代劇を支えて来たが、年々作品の数が減少し、それに伴って出番が減って来ていた。ある日、死体役として撮影に参加した作品の監督と揉め事を起こして映像作品への出番がなくなってしまう。映画パークのチャンバラショーに出演する日々の中、香美山は黙々と殺陣の稽古をし、撮影所に入った新人女優の伊賀さつきに殺陣の指導をするようになる。

 チャンバラは、時代劇の山場であり見せ場となるシーンであり、とても重要なもの。悪を叩き斬る正義の味方の姿は実に格好よく、主役それぞれに殺陣の動きがあり、お決まりのポーズを見るのも良さの一つ。しかしチャンバラは主役だけでは成り立たず、斬る人間がいれば斬られる人間が必要なわけで、主役が引き立つかどうかは斬られ役しだい。その斬られ役を実際に長年演じ続けた福本清三さんが俳優人生50年以上にして初主演を演じたのがこの作品。

 裏方で生きる男の人生の哀愁が、福本清三さん演じる香美山清一の背中に乗っていて非常に切ない気持ちになった。目頭が熱くなって涙なくしては見られなかった。舞台の中央で常にスポットライトを浴びる人生ではないからこそ努力を怠らず、欲せられることを喜びとし、寡黙に謙虚に生きる。己の仕事に誇りを持ち、出しゃばらず、引き際の美学に沿った身のこなし。何事もコツコツと積み重ねることの重みと、その重さゆえの憂いさとが描かれてあって胸の熱くなる作品だった。

 「また斬らせてくれ」と言われることは、香美山清一にとって最大の賛辞であっただろうと思う。己の仕事が評価されることの喜び。それが伝わってくる内容でよかった。地味なテーマでありながら、チャンバラシーンが多いため視覚的な飽きが来ないのもよかった。斬られ役をバッサリと斬る役を演じた松方弘樹さんもきびきびとした動きで迫力があってよかった。

 しかし、何と言っても良かったのは照明と撮影。照明は陰影の美しさが映像を引き締めていてよかったし、撮影は、じっくりとした溜めのあるカメラの動きで役者の表情を捉え、少し長いくらいの余韻がドラマに深みを増していてよかった。特に冒頭の障子に映し出される影のみで見せる殺陣のシーンは最高の映像美。見る者の想像力を膨らませる素晴らしい演出。そしてラストの美しい斬られっ振り。これぞ斬られ役人生の花道。
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