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「どろろ」手塚治虫
投稿日 : 2006/04/04 03:19
投稿者 梶原正義
参照先
ご存知,手塚治虫先生の作品で,かつてモノクロでアニメ化されたことでも有名ですね(カルピス劇場の第一作としても有名かな?)。
ところが,この作品,主人公は「どろろ」ではなく,「百鬼丸」だったりする(そんなわけで,アニメの方も途中から「どろろと百鬼丸」に変更されちゃったりする)。
父の天下取りの野望をかなえるために悪魔に体の部分48ヶ所を奪われて生まれた百鬼丸が,どろろと共に旅をしながら妖怪を退治することで,一つ一つの体を取り戻していくというストーリー。
水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」などの妖怪漫画ブームが起きたことを受けて,手塚治虫原作の「妖怪もの」を!という製作者側の依頼を受けて作成したものなので,水木氏からは「一番病」と皮肉られたりしたこともあり,手塚作品の中ではそんなにステータスは高くないと思う。
手塚治虫先生が元医者であることもあり,身体パーツをちょっと弄ぶような表現もあり,また今日の良識的なモラルからするとやや差別的でもあり不快に思われることも多いであろう。
とはいえ,逆にこのようなテーマを扱えない現在だからこそ,そして現在のモラルがあってこそ,その内容の重さが伝わってくるようにも思える。
個人的には,百鬼丸が赤ん坊のころ拾われた医者のもとで必死におかゆをすすったり,「パパ大好き」と答えてみたりする姿は,逆に愛おしささえ感じたりする。
また,この作品,手塚治虫先生の作品の歴史の中では,なかなか興味深い地位を有してもいる。「異形の者」というコンセプトは鉄腕アトム以来の系譜を引くといえるが,医学的なコンセプトやニヒルな百鬼丸という主人公は,後のブラックジャックに通じる。実際に,ブラックジャックでは,百鬼医師という百鬼丸そのまんまのキャラクターが登場し,主役のバトンタッチをする訳でもある。そして,天真爛漫で癇癪もちの悪ガキ「どろろ」は,ピノコに代わるわけだ。
そして,忘れちゃいけないのが,百鬼丸の腕は刀が仕込まれた義手で,いざという時はその義手を外して戦うというコンセプト・・・手塚治虫先生の弟子でもある寺沢武一の「コブラ」のコンセプトにも大きな影響を与えたであろう。
ある意味では,歴史モノ・史観モノということで,「火の鳥」にも通じる部分もありそうだ。
実際に百鬼丸を育てた医者の容貌は,「猿太博士」を思い出させるものである。
でも,私自身は「火の鳥」よりも,こちらの重々しい人間社会の暗部が書かれた「どろろ」の方が重く感じられる。
それと,手塚作品においては「ヒロイン」「女性」という存在にあまり思い入れがないことに始めて気が付いた。いわゆる男性主人公を助けたり,支えたり,見守ったりする女性(いわゆる母性を感じさせる「紅一点」)は,ほとんどいないのね(仲間としては存在しても・・・ウランちゃん等。サファイア姫は,当然この範疇には入らないだろうし)。むしろ,男性キャラに庇護者としての地位を与えているのだなと。「どろろ」でも然り。下手すりゃ,女性は妖怪変化だよ。そんな視点で手塚治虫先生自身のキャラクターを考えてみるのもまた面白い。
ちなみにアニメ版で主人公「どろろ」の声を演じたのが「松島みのり」,そしてクールな「百鬼丸」を演じたのは「野沢那智」。まさに,ドンピシャという配役だが,特に野沢さんが印象深いキャラクターとして一番に挙げていた記憶がある。是非,その真意も聞いてみたいところ(そういえば「コブラ」も野沢さんでしたね・・・何やら因縁めいたものが・・・そう考えると「コブラ」を「スペースルパン」と考えるか,「スペース百鬼丸」と考えるかでも印象が変わってくるな)。
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