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「普通の人々」 松山花子
投稿日 : 2007/03/07 14:43
投稿者 久保田r
参照先
2006年12月24日 (株)幻冬社

 これは何とも説明しやすいようなしづらいような微妙なコミックス。主人公となる家族は佐藤一家で、サラリーマンの父に、専業主婦の母に、中学生の長女に、幼稚園の長男というごく「普通」の構成の家族が、マイナー人しか住まないという町に転勤となったことから「普通ってなに?マイナーってなに?」という問題に直面しているシニカル・ショートギャグ。

 それを言っちゃおしまいよ的なことを言わせてもらうと、佐藤家がこの町に移り住んだ時点でこのコミックスの中では佐藤家自体がマイナーな存在になっているのだけど、コミックスが問いかけているのは、読者のメジャー指向の考え方であって、ある意味では作者自身の内面を世間に問い質しているような内容。このコミックスを描いている作者は「普通」の感覚とは離れた感性の作品が多いので、このコミックスを読むことによって作者が常々世の中の「普通」に対してどれだけ深く不思議に感じているかが分かる。

 例として挙げると、子供嫌いな保父とか、性欲をまったく隠さない女性とか、男性専用の車両のある電車とかが登場する。こういったものが登場し、「普通の人々」である佐藤一家(特にサラリーマンの父)は、当初は当惑するのだが、やがて「普通」という枠に収まらない自由な生き方に馴染んでいき、最後には凝り固まった「普通」の考えに対して異義を唱えるまでになる。ここまで佐藤一家がマイナーに対して馴染むと、作品上でも何がメジャーで何がマイナーなのかの境界が曖昧になるが、メジャーかマイナーかは結局は多数派か少数派かの違いだけのことであるということが分かる。

 普段の生活で「こうすることがみんなと一緒だから」と意識しながら過ごしている人には、面白さが分かるコミックスかも知れない。また自分はマイナー嗜好だからと自覚している人にも面白さが分かると思う。面白さが分かる人がいる反面、どこが面白いのかピンと来ない人もいると思うが、そこがまたこのコミックスの存在価値。面白いと感じる感性は誰一人として同じものはないのだから、それで良いのだとこのコミックスは伝えている。

 ちなみに、私は、目次にある「チェックリスト」を行って、6コ当てはまったので「この本に登場する町に住んでいただけそうです」という結果になった。(Macユーザーなので確実に1コはチェック/笑)

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