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「鰻の寝床」 内海隆一郎
投稿日 : 2009/02/06 17:56
投稿者 久保田r
参照先
2001年2月20日 (株)光文社 光文社文庫

 新橋界隈で飲食店を営む店主たちの人生が綴られている短編集。天婦羅屋、寿司屋、おでん屋、洋食屋、中華料理屋、牛モツ屋、鰻屋、焼肉屋など…代々受け継がれた店、一代で築いた店などの店主たちの人生が、ほろ苦く人情味を交えながら描かれている。

 時代設定は現代であるけれども、店を始めた当時の店主たちの若い頃を振り返るシーンは、ほとんどが戦後間もない頃。物資不足の中で生きるために必死になって自分にできることを見つけ、続けているうちに現在の店となったドラマが、短いストーリーの中に分かりやすく丁寧に綴られている。

 お客の食事時間に合わせて営業している飲食店の経営者の生活は、一般人とは異なる時間の中で暮らしているのがほとんどで、えてして想像も及ばないような人生を送っていたりする。表題作の「鰻の寝床」は、店を継ぐ筈の息子が鰻を焼く匂いを嫌がって全く別の職種の仕事に就き、代わりに妻に鰻屋の女将を任せていた。あろうことか外に子供を作り、妻にその子の面倒を見させようという顛末が描かれている。男女の愛憎劇にもなりそうな内容だが、女将は、妻としての感情を持ちつつも、その子に店を継がせようと思い至り、店への愛情と義父への愛情が表現されている人情味のある話となっている。

 料理方法まで紹介されているので、読んでいると、それぞれの店の得意料理の香しい匂いまでして来そうなほど。晩酌のお供におすすめの本。

<収録作品>
油のつぶやき/ネタ選び/チクワの穴/ソースが決め手/セイロの湯気/牛モツの味/鰻の寝床/フライの中身/カルビの煙(全9篇)

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