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「レイチェル・ウォレスを捜せ」 ロバート・B・パーカー
投稿日 : 2007/08/03 16:08
投稿者 久保田r
参照先
昭和63年3月15日 (株)早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫

 「スペンサー・シリーズ」のハード・ボイルド小説。主人公のスペンサーは、職業は探偵で、タフで女性に優しい男の中の男。常に自分の信念に沿って行動しているが、そのスペンサーが、レズビアン解放運動をしているレイチェル・ウォレスの護衛に就くというのが今回のストーリー。

 レイチェル・ウォレスはレズビアンであり、それを積極的に周囲に知らしめている同性愛解放運動者なのだが、まずは、こういう立場のキャラクターが登場するということがアメリカ的だと思ったし、そして、こういう同性愛解放運動のような社会問題が取り上げられるのもアメリカ的だと思った。ましてや、理想の男性を絵に描いたようなスペンサーとレズビアンであるレイチェル・ウォレスの存在は、水と油とも言えるほど正反対なので、果たして二人は最後には打ち解け合うのだろうかとその点に興味を引かれて読んだ。

 「ぜひに」と頼まれる形で護衛に就いたスペンサーだったが、やはりスペンサーは信念の厚い男であり、レイチェル・ウォレスとは衝突ばかり。そして遂に解雇される。それは、予想された展開だったが、スペンサーが素晴らしいのは、自分を解雇したレイチェル・ウォレスが誘拐されたと知るや、単身で彼女を捜索するところ。感情面を脇に追いやり、一度は引き受けた自分の仕事をプライドをかけて遂行する点は、スペンサーの人間的な誇りが表れている。スペンサーの捜査の甲斐あってレイチェル・ウォレスは無事救出される。救出後の二人の間には他人には分からない奇妙な絆で結ばれており、レイチェル・ウォレスはスペンサーに心を許すようになる。特別な絆を得た二人ではあったが、スペンサーはスペンサー。何も変わらない。ラストの「ベッドに腰を下ろすと彼女が私の手をとり、眠ったまま夜明け近くまで握っていた」が印象的だった。

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