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「帰郷ツアー」 内海隆一郎
投稿日 : 2009/11/26 16:14
投稿者 久保田r
参照先
1995年11月15日 (株)講談社 講談社文庫

<収録作品>
熱海まで/筆跡/娘の立場/スペイン土産/真夜中の電話/先輩の娘/二十九歳/帰郷ツアー

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Re: 「帰郷ツアー」 内海隆一郎
投稿日 : 2009/11/26 16:15
投稿者 久保田r
参照先
 短編6本と、"二十九歳の女性”をテーマとした短編6本が綴られている「二十九歳」、そして表題作の「帰郷ツアー」の3部構成となっている本。

 表題作の「帰郷ツアー」は、中編。瀬戸大橋の橋脚となっている一つの島が生まれ故郷となっている男たちが1台の車に乗り合わせ、それぞれに抱える過去と男の心情とを、行く先々で思い出に触れながら思い出して行くというツアーが描かれている。作者の内海さんにしては珍しくハードな設定のストーリーだなと感じたけれども、島という閉鎖的な空間で育った男たちの胸内に渦巻く葛藤といったものが作者独自の人間味のある表現で描かれてあり、なかなかに読み応えのある作品だった。

 「二十九歳」は、その年齢をとうに越えた私にも十分に楽しめる作品だった。二十代の最後の年齢となる「二十九歳」は、平たく言えば「おばさん」と「おねえさん」のギリギリの境のようなもの。実際は、三十代からの方が周囲がよく見え、心身共に充実してくるのだが、そうは言っても輝かしい二十代は二十九歳が最後の年齢。それだけに繊細な女性の「心」は、迷いと不安に揺れ続ける。そんな女性たちの思いが6本の短編に綴られている。

 「熱海まで」〜「先輩の娘」までの短編は、特に決まったテーマはないものの、作者の人間観察から生まれた人生模様が描かれている。富士山に殊の外思い入れの強い老夫婦の話や、かなり年上の女性から好かれる男性がスペインから連れ帰った女性は実は…という怪談めいた話や、会社の先輩の娘に恋した中年男性の話など、ちょっと一風変わった話が多い。一風変わってはいるものの、作者の描く人間味は変わらずに味わうことができる。
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