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「欅通りの人びと」 内海隆一郎
投稿日 : 2012/04/12 16:28
投稿者 久保田r
参照先
1994年5月15日 講談社文庫

 1994年1月4日〜2月3日にかけて放送されたNHKのテレビドラマの原作。とある商店街の道路の両側に欅並木があることから「欅通り」と呼ばれ、その商店街に住む人びとの暮らしを描いている。

 登場するのは、自転車屋のおじさんと、喫茶店のママと、喫茶店の常連客と、少年サッカーチームの監督と、高校卒業後すぐに駆け落ち同然に同棲を始めた若いカップルとその少女の父親、自転車屋のおじさんに懐いている小学二年生の少年とその父親、そして少年サッカーチームに入っている子どもたちの母親たちと「欅通り」で暮らす人びと。

 一見どこでにでもありそうな普通の人びとの集まる商店街のようだが、中を覗いてみると、人それぞれに複雑な事情を抱えており、ままならぬ人生の切なさといったものが感じられる内容となっている。自転車屋のおじさんに懐いている小学二年生の少年は、父親とふたり暮らしで、父親が仕事で幾晩も帰って来ないことから自転車屋のおじさんの家に住み着くようになる。喫茶店のママは、一人娘を不慮の交通事故で亡くしている。高校卒業後かけ落ち同然に同棲を始めた若いカップルの少女は妊娠しており、養女として育てた父親が猛反対をしている。少年サッカーチームの監督の過去の問題を理由に退任を迫る母親たち。…といった、人びとが集まって暮らす場所にはつきもののような様々な人間関係の摩擦が描かれてあり、そこで生まれる人間ドラマを欅の木が見送っている…というような感じのするお話。

 血の繋がりや、他人と一緒に暮らすことの距離感といったものが丁寧に描かれてあり、思うように進まない人生の切なさが綴られてあるところがいいところ。困っている人に優しく手を差し伸べるものの、時期が来ると人は巣立って行くという時の経過と共に変化する人の状態が綴られている。ましてや若いうちは尚更変化が大きいもの。子ども〜初老のおじさんまでが登場し、一つの地域で暮らす人びとの出来事を、落ち着いた目線から綴っている。

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