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「宇宙戦艦ヤマト」
投稿日 : 2001/12/12 02:49
投稿者 梶原正義
参照先
作詩:阿久 悠/作・編曲:宮川 泰

もはや何の説明も要らない永遠のアニソン・スタンダードである。未だにアニソン特集では必ずトリを務める上、B面が「真っ赤なスカーフ」とくれば、まさに最強のレコードと言っても過言でない。宮川先生もよくネタにされるように、この曲は西崎氏の要望で「海の底から復活して浮上するように」低い音で始まり徐々に高揚するようなメロディにするよう何度も書き直させられたらしい。
しかし、この曲の素晴らしさはそれに尽きるものではない。何と言ってもたった2分17秒という短い曲に凝縮されたメロディ展開とアレンジの良さだろう。
基本的には起承転結という王道パターンだが、そのどの4小節を切っても名曲なのである。「起」の部分は上述のように重々しくも動的な「静」であるがタイトル部ですぐさま高揚する。続いて「承」はスピーディな「動」だ。「転」は一転して「静」、
しかも前半は「剛」だがすぐに「哀愁」のメロディに転じて泣かせるし、しかもたっぷり「タメ」を作ってくれる。そして「結」、やや静かに「承」のメロディをリピートしつつ、最後に再びタイトルで最大に高揚して締めてくれる。どの部分もちゃんと有機的に組み合わされて無駄がない。どれもが独立しつつかつ関連的であり、その意味でドラマチックだ。どの部分もアレンジ可能にしてそれが"ヤマト"と分かるのだ。
アレンジも練りに練られている。手出しのメロディはアニソンの定石Gm(?)から始まるが、その後に管楽器で「パッパッパー♪」と伴奏のレスポンスが入る。主旋律の音階が上がって行くのに反比例して、この部分が下っていく。つまり、主旋律はマイナーから上がっていく(まさに海の底から這い上がるように)のに、カウンターで対応するように哀愁のある伴奏がぶつかるという・・・編曲者、宮川泰先生のマジックが冴えるのである。単なる"合の手"でない"内助の功"的主準の絶妙さなのである。
そして、忘れてはならないのはシンフォニーの導入である。宇宙を交響楽で表現するアイデアはSF映画「2001年宇宙の旅」で実証済だが、アニソンへの導入という点に意味がある。 アレンジの複雑さも加わり、まさに階層的で洗練された「深み」となり、従前のアニソンとは一線を画している。動と静、剛と哀愁がうねるメロディも戦前からの昭和日本歌謡の王道を継承したもので、それら全てを含め「コンチネンタル(大陸的)」であることも指摘すべきだろう(軍歌旋律なのにボレロ風味)。こうした要素が「正統的(オーソドックス)」であり「スタンダード」なのである。ただし、同時に阿久 悠/宮川 泰両氏だけにあくまで大衆的でポップであることも重要で、ここにヒット曲としての側面が見受けられる。
佐々木氏の艶のある重低音ボーカルも、コンチネンタルな正統性に満ちているが、同時にハイソでサロン的でない元ポップ歌手としての持ち味が十二分に活かされている。この歌は、ヤマト世代のみならず中高年にも人気が高いとの話は本人から聞く。
この辺りの塩梅は偶然と必然の奇跡だろう。これではいくら新曲を書いても、アレンジを凝ってみても、これを越えることは出来そうにない。
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