「新宿+」 森山大道
投稿日 | : 2007/03/26 15:47 |
投稿者 | : 久保田r |
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2006年11月 月曜社
新宿を白黒写真で写し取った写真集。既刊「新宿」を再編集し、大幅に増ページした新編。単行本サイズに大量の写真が収録されているので、お腹いっぱいになるまで”森山大道の目から見た新宿”を堪能することができる。
私は森山大道というカメラマンについても「新宿」という既刊写真集があったことも知らず、ふらっと入った喫茶店でこの写真集を見た。この喫茶店は一風変わった喫茶店で、マスターが集めた本が本棚にずらっと並べられていて、どうぞご自由にご覧下さいというものだった。その時たまたま座ったテーブルの上にこの写真集が置かれてあって、ふと手を伸ばして中を見た時に「何だ、この写真集は」と、一瞬にして目が引きつけられる衝撃を味わった。
表紙の写真を見ても分かるように、新宿の表面的な明るさを写し取っている写真集ではない。新宿という場所は、明と暗がはっきりと混在している街で、明るい場所へ辿り着くのに暗いところを通って行かねばそこへは辿り着かないようにできており、暗い部分を見ぬ振りをして通ることはできない街になっている。格差がはっきりと混在していると言ってもいい。暗い部分と明るい部分とを行き来し、あるいは明るい部分に背を向けて生きているような街…それが新宿。
この写真集に収められている新宿は、リアルな新宿。今でもこういうところがあるのかというような所がたくさん写し取られている。生々しさとどこかしら退廃的な空気が漂う新宿が収められている。この写真集には飾り気がない。だから強烈に惹き付けられるのだと思う。偽りのない新宿がこの写真集に入っている。