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「江戸城の迷宮「大奥の謎」を解く」 中江克己
投稿日 : 2006/11/14 16:21
投稿者 久保田r
参照先
2006年9月19日 PHP研究所

 2005年出版の「江戸城「大奥」の謎」を改題し出版された文庫本。53の謎があり、それを5つの章に分けてエピソードを交えて説明している。5つの章のタイトルは「第1章 大奥誕生の謎」「第2章 女たちの暮らしの謎」「第3章 側室と「玉の輿」の謎」「第4章 大奥事件の謎」「第5章 女の花園の謎」。それぞれの章の下に細かな謎があり「大奥の制度はいつできたのか」とか「宿下がりは自由にできたのか」とか「将軍には何人側室がいたのか」とか「なぜ破戒僧との密通事件が起きたのか」とか「どんな「いじめ」があったのか」などなどの53にも及ぶ大奥の謎について解いている。国立国会図書館蔵の「千代田の大奥」の挿絵が数枚入っており、大奥の暮らしぶりを描いた絵とともに江戸時代に栄華を極めた大奥の中身について多少なりとも知ることができる。

 だが、読んでみたところで、リアリティを持って捉えられないのは仕方のないことだと思う。戦後生まれの自分は戦前も戦前、江戸時代の社会の有り様などについては架空の時代の出来事としてしか想像できないので、この本を読んでも「へぇ〜」とか「なるほど〜」くらいの感想しかないのだが、江戸城本丸大奥の間取りなどを見ていると、巨大なシステムを丸ごと抱えることができた徳川幕府の権力の凄さというものが伝わってくる。世継ぎを得る為だけのシステム。この大奥があったから、徳川幕府はあれほど長く生きながらえることが出来たのだということが分かる。そうでなければ、大奥がこれほど巨大なシステムである必要もなかったと思う。

 それにしても女のなんと怖いことよ…。将軍の私生活を支えている大奥だけに、取り決め(法度)が厳しく、上級女中たちは一旦中に入ると一生奉公しなくてはならない。現代では考えられない環境だが、それでも大奥に入って将軍の寵愛を受けようとする女性たちが数多くいたという歴史的事実は、大奥の実態を対外的に秘密にしてきたからこそ価値を高めていたことに他ならない。将軍という絶対的価値観。それが揺るぎなく流布していた時代のシステム。それが大奥。

 しかし、女たちだけの生活の場というのは、どの角度から見てもバランスが悪いのは必至で、そのバランスの悪さから多くの血腥い事件が起きている。嫉妬、羨望、欲望、権力。大奥というシステム自体は有効ではあったが、将軍の子を産むという体を張った役目だけにゴシップネタがやけに多い。それをも含めて「大奥」のシステムを機能させていた徳川幕府は、いずれ時代の流れで倒幕するにせよ、並外れた力の持ち主であったことは歴史が証明している。無謀なと思われる一つのシステムを築き上げ、それを維持すること、そのために起こる様々な事件・問題点、終わりの時。それらをさっくりとながら知ることが出来る一冊。
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