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「AV男優」 家田荘子
投稿日 : 2006/09/12 15:29
投稿者 久保田r
参照先
平成14年12月25日 (株)幻冬舎 幻冬舎アウトロー文庫

<収録男優>
加藤鷹/浅井隆史/中山幸司/バクシーシ山下/花岡じった/辻丸耕平/沢木和也/観念絵夢/平口広美/剣崎進/武野哲/久本大痴/美の屋長さく/村西とおる/チョコボール向井

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 長年風俗を取材し続けて来た作者によるAV男優のインタビュー本。合間に4本の撮影現場見学記が挟み込まれ、観念絵夢の自宅訪問実況中継や、「マイナー男優友の会」座談会もある。AVの様々なジャンルから選ばれた男優たちの「性」に対する思いを窺い知ることが出来る。

 「上半身だけを取材しても、その人の下半身は見えて来ないが、下半身を取材すると、不思議と上半身まで見えて来る」と、作者が言っているように下半身の仕事をしている人間の上半身が見えて来るような内容となっている。中には上半身で物を考え、考えたことをそのまま下半身に投影するタイプの男優も登場するが、概ね表面的に見える下半身のイメージとは異なるイメージを上半身に持っている男優が多い。ノーマルなAVよりも変態モノと呼ばれるAVに登場する男優の方が、よっぽど”普通”に感じられる。なかなか優しくて親切な考えの持ち主が多い。そんな男性たちが何故AV男優という仕事に就き、今に至っているのかということをインタビューという形で綴っている。

 ここで大事なのは、作者が女性であるということ。だからこそ彼らは赤裸裸に語った部分もあるだろうし、女性にも分かりやすい言葉で話したのだと思う。この本を読んだ私も家田荘子さんだから読む気になったという動機の一つがある。もしこれが男性のインタビュアーであったら、私は興味を惹かれなかっただろう。そして動機にはもう一つ。それは好奇心。その昔、レンタルビデオ店で働いていた頃、ノイズチェックの為に時折AVを見ることがあった。最近のAV女優については名すらも知らないが、樹まり子は知っている。女性の目から見ても彼女のオーラは分かった。村西とおるも知っている。カリスマ的存在だ。その女性ありきのAVという仕事場で裸体を晒す男性たちの思いを知りたかった。

 しかし、実は読み進んでいくうちに気分が悪くなった。自己表現の場としてAVを選んだ彼らの思いは活字を通して伝わっては来たが、生理的な部分で拒否の気持ちが以前よりも濃くなった。映像の中にいる彼らの人間性には触れなかった方が自分には良かったようだと読み終えてからそう感想を持ったが、読んでみなくては想像だけの世界でしかなく、幻想を取り払うという意味では読んで良かったと思う。しかし何故彼らは病気になるリスクを背負ってまでAVに関わり続けるのだろう。そこまでハマってしまっている彼らの心理は、どう角度を変えても私には届くことがなさそうに思う。それが彼らの天職ということなのだろう。

 良くも悪くも印象に残っている台詞が幾つかある。だが、最も印象に残ったのは、男優たちの台詞ではなくて、ナンパされてAVに出演した女性の「なんとなく」という台詞だった。「なんとなく興味があったから」出演したという彼女が発したこの台詞。この台詞に現代の危うさが全て凝縮していると私は感じた。
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