平成2年12月15日　(株)扶桑社

モデル：東山紀之／写真：半沢克夫
衣裳：北村道子／着付：飯田裕子／化粧：本多三紀夫／編集・構成：後藤繁雄／ロケーションコーディネイト：(株)石沢事務所／プロデュース：田中良明／撮影協力：ジャニーズ事務所、比叡山延暦寺、石庭・龍安寺、天竜寺

　京都で撮影された写真集です。雨のイメージの中、枝に雫がついた林の中に着物を着た彼が色っぽく佇んでいる姿が写し出されています。
　私は、以前から撮影者である半沢克夫さんの写真が好きで、ポートレートを中心にした写真集を持っているのですが、半沢さんの撮る白黒写真は、被写体の内面の力を引き出す力があると感じています。この写真集の被写体である東山さんは、芸能界という仕事をしているだけあって、その顔立ちも美形と呼ぶに相応しく、年齢を重ねてもシャープな線を保ち続けている彼の美しい顔の稜線は、そのあまりの綺麗さに誰もが迂闊に近付けない禁欲的な清廉さを体全体に湛えているように思うのですが、その彼の真直ぐな美が半沢さんのカメラを通して花開き、京都の寺という場所を得て輝きを増したのがこの写真集であるように思います。
　きっちりと着付られた清楚な出で立ちと、はだけた合わせ目からのぞく肌の質感。艶やかさと婀娜っぽさが同居しているこの写真集は、京都という場所で現代にいながらにしてまるで過去にタイムスリップしたかのような錯覚と、剛と柔が溶け合うことで生み出された東山さん個人の色気を全体に内包しているように見えます。東山さんの青年から大人へと移ろう時の端境が写し出されています。

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