アレクサンドル・デュマの『三銃士』の主人公として知られるダルタニャン、実は彼が実在の人物だったことはご存知か。
勿論デュマの『三銃士』は創作であり（更にこの物語には、クールティル・ドゥ・サンドラスが著した偽回想録『ダルタニャン氏の覚え書』という元ネタがあって、その引用ぶりは盗作ギリギリなのだそうだ）、そこに登場する人物や事件も史実通りというわけではない。だがデュマらは単にダルタニャンの名前を借りただけではない。史実のダルタニャンもまた魅力的人物だったからこそ、フィクションの世界とはいえ今日まで生き延びてきたのである。
事実は小説よりも奇なり――という表現があるが、ノンフィクションという体裁をとりながらも、本来は小説家である著者によって史実が語られて行くうちに、虚実双方のダルタニャンが渾然一体となっていく様は正に快感。『三銃士』ファンのみならず、歴史にロマンを求める人には是非一読して欲しい。


2002.2.20　第１刷発行　　　岩波新書

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