平成9年5月15日　(株)京都書院

　東京の住宅というか各部屋の生活空間を写し出した写真集。
　トレンディドラマなどで紹介される「綺麗で洗練された東京の生活のイメージを払拭する」といったコンセプトの本。ひたすら部屋の中が写し出され、狭いながらも片付いた部屋だとか、狭く乱雑な部屋、広い部屋なのに物が多くて狭く見える部屋など、住む人の環境や性格が如実に見えて来る本となっている。

　確かに東京はきらびやかに見える。高層ビルが立ち並び、夜は華やかなネオンで彩られ、刺激に溢れ、良いことばかりが転がっているように見える。しかし、実際には、高層ビルが立ち並んでいるのは、東京の一角に過ぎないし、華やかなネオン街も限られた空間にしかない。朝になると、通りに溢れたゴミを清掃車が回収し、エサを求めてカラスが飛び回っている。

　生活するということは、どの場所に於いても例外ではない、ということをこの本は示している。地方にいても東京にいても生活は生活。この本を見て過去を振り返るも良し、人の生活を垣間見る楽しさを味わうも良し、住人の人生を想像するのも良し、自分の部屋と比較するのも良し。ありとあらゆる「東京生活」が載っている写真集。理想と現実の違いが分かる人に。

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