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「娼年」
投稿日 : 2020/05/02(Sat) 17:53
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:三浦大輔
製作:小西啓介、松井智、堀義貴、木下暢起
エグゼクティブプロデューサー:金井隆治、津嶋敬介
プロデューサー:永田芳弘、山野邊雅洋、藤原努、石田麻衣
企画・プロデュース:小西啓介
原作:石田衣良(「娼年」集英社文庫)
脚本:三浦大輔
撮影:Jam Eh I
美術:愛甲悦子
編集:堀善介
音楽:半野喜弘

<出演>
松坂桃李/真飛聖/冨手麻妙/猪塚健太/桜井ユキ/小柳友/馬渕英里何/荻野友里/佐々木心音/大谷麻衣/階戸瑠季/遠藤祐美/鈴木葵椎/松本万弥/牧純矢/西岡徳馬/江波杏子、他

2018年 R18+指定

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Re: 「娼年」
投稿日 : 2020/05/02(Sat) 17:58
投稿者 久保田r
参照先
 小説家、石田衣良さんの原作を映画化した作品。監督・原作は、同作品の舞台化を手がけた三浦大輔さん。主演も舞台と同じく松坂桃李さん。他にも、アズマ役を舞台と同じ猪塚健太さんが演じている。

 大学生の森中領は、バーテンダーのアルバイトをしながら退屈な日々を送っていた。ある日、店に綺麗な年上の女性が訪れる。その女性はホストをしている幼馴染のシンヤの店外デートの相手であったが、御堂静香と名乗ったその女性は閉店後に再び領の前に現れて自宅へと連れて行く。そして、「私の目の前で行為を見せてちょうだい」と誘いかける。

 原作未読、舞台未見の自分が鑑賞中に感じ取ったことは、「娼年は少年とイコールであり主人公の成長を描いた物語」という印象を受け、誠に勝手ながら結末はコールクラブを卒業してすっきりと終わるのだろうと想像していた。…と、思いきや、それとは逆の受け継いで継続するというオチとなっていて「こうなった領のどこが普通の人なんだ」と半ば呆気に取られたオチだった。

 鑑賞後に調べていてさら呆気に取られたことに、この作品は恋愛小説なのだという。確かに領の静香への恋愛感情は描かれていたが、そのためそれが作品の中心にあると言えなくもないが、しかし領の静香への感情はストレートな男女の愛情ではなかった。ストレートな愛情という点では、恵の領への好意だけだろう。他は領を含めて全て打算やすり替えであり、その向こうに欲しいものを求めている大人たちの欲望が描れていた。恋愛は綺麗事ばかりではなく成就しない恋も恋愛の一つではあるが、この作品の本質は本当にそこなのか?というのが、正直なところの感想。

 作中での領は100%モテ男で、誰しもが「普通の魅力がいい」と褒めちぎる。それに気を良くした領がコールクラブの仕事にのめり込んでいくという流れなのだが、そういう設定なのだから仕方ないと言われればそれまでだが、いわゆる普通の子はこのようなアクの強い世界に足を踏み入れれば呆気なく潰れてしまうものではないだろうか。それなのに領はNo.1に近いところまで上り詰めてしまう。この場合、領の武器はどんなに年上の女性でもきちんと相手にするという点だろう。だからNo.1のアズマは嫉妬もせず、むしろ好意を持って領に接した。どんな要求もスポンジのように受け入れる領は、天性の娼夫なのかもしれない。それだからこそ卒業ではなく継続という形のオチなのかもしれない。だが、天性の娼夫の魅力が「普通の魅力」と言われてもどうもピンと来ない。相手によって態度を変えることなく自分らしく接するのが魅力だというなら、それは「天然の魅力」なのではないだろうか。

 領の人生は切ない。決して先は長くはないことを、静香を筆頭に登場人物たちが暗に示している。若くしてこの道を選んだ領の行く末を思うと、自然と悲しみが胸の中に染みのように広がっていくのを止められない。それがこの作品の後味。
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