トップページ > 記事閲覧 
「Fukushima 50」
投稿日 : 2021/08/27(Fri) 16:56
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:若松節朗
製作代表:角川歴彦
エグゼクティブプロデューサー:井上伸一郎
製作:堀内大示、大角正、布施伸夫、井戸義郎、丸山伸一、安部順一、五阿弥宏安、飯塚浩彦、柴田建哉、岡畠鉄也、五十嵐淳由之
脚本:前川洋一
音楽:岩代太郎
音楽プロデューサー:小野寺重之
バイオリン独奏:五嶋龍
チェロ独奏:長谷川陽子
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
企画:水上繁雄
企画プロデュース:椿宣和
プロデューサー:二宮直彦
撮影:江原祥二(J.S.C)
美術:瀬下幸治
特撮・VFX監督:三池敏夫
協賛:東日本映画
特別協力:保険クリニック、アメリカ合衆国国防総省、アメリカ合衆国空軍省他
制作協力:復興庁

<出演>
佐藤浩市/渡辺謙/吉岡秀隆/緒形直人/火野正平/平田満/萩原聖人/吉岡里帆/富田靖子/斎藤工/佐野史郎/安田成美/堀部圭亮/小倉久寛/和田正人/石井正則/三浦誠己/堀井新太/池田努/ダニエル・カール/小野了/金山一彦/天野義久/金田明夫/小市慢太郎/中村ゆり/田口トモロヲ/篠井英介/ダンカン/津嘉山正種/段田安則、他

2020年3月6日 KADOKAWA

記事編集 編集
Re: 「Fukushima 50」
投稿日 : 2021/08/27(Fri) 17:03
投稿者 久保田r
参照先
 2011年3月11日東北地方太平洋沖地震の津波によって発生した福島第一原子力発電所の事故を描いた作品。ノンフィクションではないものの事実に基づいたストーリーと銘打っており、原作は門田隆将さん著の「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」。監督は、「沈まぬ太陽」「空母いぶき」等を手掛けた若松節朗さん。佐藤浩市さんと渡辺謙さんが、原発事故発生当時現場で実際に指揮を執っていた二人の責任者役を演じている。

 作品は、初っ端から大きな揺れから始まり、特撮とVFX技術によって太平洋の海底から迫り来る地震と津波が表現されている。あまりの規模の大きさゆえにこれから怪獣映画でも始まるのかと感じるほどであるが、しかしあの大地震は現実に起きたものであり、あれを視覚的と心理的の両面から描写するには、いかに大仰に表現するかが記憶を呼び起こすという意味に於いて訴える力があったように思われる。

 福島第一原発の事故との戦いは、この地震と津波によって始まった。「想定を超える」津波によって全電源を失ったことで原子炉を冷却することができなくなり、この時点でメルトダウンへのカウントダウンが始まったことを意味する。電源がないということは中央制御室からのコントロールができないということであり、最悪の事態を避けるためには最もアナログな方法、人間の手による作業が余儀なくされ、現場に残って決死の作業に赴いたおよそ50人に対して内外のメディアが呼んだ名が「Fukushima 50」。この作品は、その50人の奮闘を描いたもの。

 さて、その50人の中には、呼ばれてもないのにわざわざ現場に乗り込んできた当時の総理大臣も含まれているんですか?と皮肉の一つでも言いたくなるほど、国のトップと東電本店の混乱とパニック振りが描かれている。怒鳴りつけるばかりでは、現場で作業する者たちの耳には入らない。現場とトップ連中との間に挟まれ、時にはトップ連中の目を掠めて指揮を執り続けた吉田所長と伊崎当直長の断固とした姿勢には頭が下がる思い。

 作品は、前半は時間が進むごとに悪化する事態を収束させるために必死な作業員が映し出され、防護服に身を包んでいるとはいえ体ひとつで原子炉内に入っていく姿など緊迫感のある展開が続き、これが実際に行われていたことなのかと思うと胸が苦しくなった。特に、志願してベントに向かった作業員の姿には涙がこぼれた。これは確かに彼らの勇気ある行動がなくては今の私たちはない。

 反面、後半になると時の流れはゆるやかな方向へと移ってゆく。いまだ原因解明となっていない2号機の原子炉の決定的な破壊を奇跡的に免れたことによって最悪のシナリオは避けられ、Fukushima 50の面々はようやく家族の待つ避難所へと向かうことができた。

 ストーリーの落とし所については、この描写しかなかったのか?という疑問符もあるが、現時点で締めくくって作品として完成させるという意味に於いては穏やかな後味を残しているため、これしかないような気もする。事実に基づいているとはいえ、これは映画作品。福島第一原発事故は未だ終わりがなく現在進行形の真っ只中にあり、それを題材として劇場公開するにはエンターテインメント性を少なからず求めることになり、その点を補っているのが風景描写と劇伴音楽。殊に美しくも物悲しい音楽は作品の幕をしめやかに下ろしている。

 福島第一原発事故は、おそらくこの先も完全なノンフィクション作品が作られることはないだろう。だが、劇中で伊崎当直長が言ったようにこの記憶を語り継いでいく必要はある。そのためには、今後新たな事実が見つかった際には、ぜひとも新事実を基にした作品が作られることを望む次第。

 前半は衝撃的状況と混乱を、後半は人間ドラマを描いている作品。
記事編集 編集
件名 スレッドをトップへソート
名前
メールアドレス
URL
画像添付


暗証キー
画像認証 (右画像の数字を入力) 投稿キー
コメント





- WEB PATIO -