「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」
投稿日 | : 2002/01/23 23:22 |
投稿者 | : Excalibur |
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ピアース・ブロスナンの「007」2本目で、シリーズ通算18作目。今回の相手は、情報操作と武力行使によって世界を手中に収めようとするメディア王。英国と中国は一触即発の危機に陥る・・・。
ブロスナン=ボンドは前作の固さもとれ、伸び伸び演じているようで見ているこちらも安心。ショーン・コネリーの個性の強さはともかく、ロジャー・ムーアのソフトさやユーモア、ジョージ・レーゼンビーの身のこなし、ティモシー・ダルトンのクールさ渋さと歴代の長所をあわせ持ったこのブロスナンある限り、シリーズは安泰だと印象付けられた。
だが今回もっとも注目すべきは、中国の女性諜報員ウェイ・リンを演じる<ゴッデス・オブ・アクション>ミシェール・ヨー! 今までアクテイブなボンドガールは何人かいたが、全てにおいてボンドと対等に渡り合えたヒロインは存在しなかった。だが彼女は正に<女性版007>と呼べる存在で、手錠で繋がれたままでのバイクでの脱出行をはじめとするアクション・シークエンスの迫力は、完全にブロスナン=ボンドを凌ぐ。彼女単独のアクション・シーンなどまるで香港映画を見ているようだ(それでも香港映画での彼女の方が遥かに凄いのではあるが)。ウェイ・リンを主人公にしたスピンオフ作品の製作が噂されるのも当然である。
そこでこの作品では、ブロスナンがミシェル・ヨーに食われているとして一部では不評のようだが、実際にはそんなことはない。ウェイ・リンが光って見えるのも、全ては余裕を持ってボンド役に臨んだブロスナンの存在感と包容力あってのもの。ボンドあっての「007」映画であり、ボンド自身の魅力は決して損なわれてはいないのだ。
また、エリック・セラに代って音楽を担当したデヴィッド・アーノルドの活躍も特筆しておきたい。良くも悪くもエリック・セラ色が強く出て違和感の残った『ゴールデンアイ』と違って、デヴィッド・アーノルドはお馴染みの「ジェームズ・ボンドのテーマ」のみならずジョン・バリーが手掛けた他のBGMも盛りこむサービスぶり。作曲家というよりはどちらかというとアレンジャーに徹した印象が強いが、「007」ムードは満点で、このシリーズでも上位に食い込むであろう快作を見事に支えあげたのである。
作品データ