「モスラ」 (1996)
投稿日 | : 2004/07/01 06:06 |
投稿者 | : Excalibur |
参照先 | : |
企画・原案:田中友幸
製作:富山省吾
プロデューサー:北山裕章
脚本:末谷真澄
監督:米田興弘
音楽:渡辺俊幸
特技監督:川北紘一
小林恵/山口紗弥加/羽野晶紀
萩原流行/二見一樹/藤沢麻弥
高橋ひとみ/梨本謙次郎
1996年
守るために戦う!
投稿日 | : 2004/07/01 06:07 |
投稿者 | : Excalibur |
参照先 | : |
ハリウッド版にバトンタッチして休息に入った<平成ゴジラ・シリーズ>。いずれ近い将来復活してくるであろう「ゴジラ」までの繋ぎとして正月興行の顔をまかされたのは、ゴジラに次ぐ人気怪獣(らしい)モスラだった。この4年前にモスラそのものは久々に銀幕に復帰しているが(『ゴジラVSモスラ』)、主演作としては実に35年ぶり。
物語の舞台はほぼ北海道の原野に限定され(一部、屋久島の描写が入るが)、都市破壊シーンや防衛組織との攻防戦は一切排除。変わりにエリアス姉妹(いわゆる小美人)たちによる小さな戦い=リビングルームでのドッグ・ファイトなどの新趣向を盛り込み、怪獣映画ではなくファンタジー映画として描こうという狙いだ。
しかし、一見ファンタジー風ではありながらかつての『モスラ』もれっきとした怪獣映画だったわけで、もしファンタジーをやりたいのであれば、全く新しい世界観のもとモスラのような手垢の付いた認知されすぎたキャラクターなどを用いず、新たなクリーチャーを創造し挑戦すべきだったろう。勿論それでは興行的に成立し難いという理屈は承知の上で、敢えて望みたい。
またそのバランスを更に危うくしているのが、新怪獣デスギドラの存在である。言ってみればファンタジー物には定番である竜(ドラゴン)なわけだが、三つ首のデザインといい、そのネーミングといい、強烈に他の世界に根付く存在である。本来不定形生物であるとされるデスギドラが何故そのような姿をとるに至ったのかという経緯は、かつて宇宙のどこかで遭遇した似た姿の宇宙怪獣と戦った際に、その相手の能力を取り込んだから、という裏設定も存在するようだが、これが新しい作品を生み出そうとするスタッフの導き出した答えだとするならば、かなり志が低いと言わねばならない。ファンタジーとしては飛躍が足りなく、怪獣映画としては物足らない、というのがこの作品のおかれた状況なのだ。
エコロジーを前面に出した作りにも疑問符が付く。人間の自然破壊、環境破壊がデスギドラを生み出したと言いたいのだろうが、デスギドラはたまたま森林伐採によって封印を解かれただけで、元来は宇宙怪獣なわけだからその存在自体を人間の責に帰するのは無理がありすぎる。
結局この作品で唯一評価し得るのは、音楽に渡辺俊幸を起用したことだろう。あまりにもヒーロー然としたテーマ音楽はモスラそのもののイメージにはそぐわない感もあるが感情移入出来るのも確かで、お馴染み「モスラの歌」のアレンジや矢野顕子の手になる新曲とのマッチングもスムーズで、久々に全篇楽しめる怪獣映画音楽の誕生となった。
最期に怪獣ファン、モスラファン向けの見せ場を一つ紹介しておこう。それは成虫モスラと幼虫モスラの同時攻撃が今回初めて見られることだ。モスラが登場する映画はこれで七本目であるが、常に成虫幼虫どちらか若しくは入れ替わりなので、両タイプが同一画面に出てくることさえ稀なのだ。