「ふたりの5つの分かれ路」
投稿日 | : 2009/08/24 13:25 |
投稿者 | : 久保田r |
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<スタッフ>
監督:フランソワ・オゾン
製作:オリヴィエ・デルボス、マルク・ミソニエ
脚本:フランソワ・オゾン、エマニュエル・ベルンエイム
撮影:ヨリック・ル・ソー
音楽:フィリップ・ロンビ
映倫:R-15
<出演>
ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ/ステファン・フレイス/ジェラルディン・ペラス/フランソワーズ・ファビアン/アントワーヌ・シャピー/マイケル・ロンズデール/マルク・ルシュマン、他
<ストーリー>
正式に離婚手続きを終えたマリオンとジルの二人。二人の間には一人息子がいるものの、破局という別れ路を選んだ。そんな二人にもかつては愛の軌跡があったのだが…。
2005年 フランス
Re: 「ふたりの5つの分かれ路」
投稿日 | : 2009/08/24 13:30 |
投稿者 | : 久保田r |
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起承転結を逆進行して描いている作品で、始めに結末があり、間に転と承が描かれ、終わりにストーリーの起が描かれているという一風変わった仕組みとなっている作品。
映画の始まりの離婚手続きのシーンは、事実ストーリー上ではラストであり、離婚した夫婦が新たな一歩を踏み出すというような未来を思わせる切り出し方ではなく、この夫婦の愛情の終焉を描いている。離婚手続き後、元夫婦は最後にホテルで体を重ねるが、結果的にそれはお互いの気持ちのすれ違いを再確認しただけの行為で終わる。愛しあって結婚した筈の男女の後味の悪い別れを描いている。
では、この二人はどのような結婚生活を送り、どのような出会いであったのかという過程を逆進行というスタイルで、非常に冷静且つシビアな目線で描いたものを一歩も二歩も引いた目線で見ることになる内容と展開になっている。
通常、ラブストーリーであれば、主人公の気持ちにシンクロして、見る側にとっても恋愛のドキドキ感に共感しながら見るものがほとんどだが、この作品は、始めに離婚ありきとなっているので、いずれ別れる夫婦の結婚生活と出会いを逆の順番で見て行くというのは、どこに気持ちを収めたら良いのか分からず、困惑に近い感覚での鑑賞となった。映画のラストシーンは、出会った二人が海へと入って行き、これから恋愛を始めるという未来を思わせる美しい映像で締めとなっているが、これを単なる美しい過去として感傷的に捉えるのか、いずれ離婚という結末を知っているだけにこの恋愛はすべきではなかったのだ悲観的に捉えるかは、見る側の受け取り方しだい。人は、失恋すると過去を振り返るものであるけれど、そこから何をどう学び受け止めるかはその人しだいという点に似ている。
別れから出会いへ向かうという逆進行のために、二人の愛の綻びといったものが冷静にシリアスに見つけることができ、なんと辛い作品であろうかと心が重くなった。離婚という結末から切り出しているだけに、恋愛と結婚を否定しているようにも思えるし、現実世界の厳しさをよりリアルに描写しているようにも思える。離婚した二人は、もしかすると新しい未来へと歩き始めたのかも知れないが、それを匂わせるキーワードは何一つとして登場しない。フランソワ・オゾン監督は、この作品の次に「ぼくを葬る(おくる)」(レビュー:http://chaos-i.com/review/cinema/patio.cgi?read=36&ukey=0)を制作している。