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「ビューティフルボーイ」
投稿日 : 2007/04/18 15:58
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:エカチャイ・ウアクロンタム
プロデューサー:エカチャイ・ウアクロンタム
脚本:エカチャイ・ウアクロンタム、デスモンド・シム・キム・ジム
撮影:チューチャート・ナンティタンヤタダー
音楽:アマポラン・メータクナウット
美術:ノッパドン・アーカート
編集:ドゥサニー・プイノンポー

<出演>
アッサニー・スワン/ソラポン・チャートリー/オラノン・パンヤウォン/井上京子/シティポン・ニヨム、他

<ストーリー>
タイの北部の村で生まれたトゥムは、幼い頃に見た綺麗な女性が踊る伝統舞踊に魅せられて化粧に興味を持ち始める。成長し、トゥムは、しだいに自分の体と心のズレに悩み始める。そんな時、成り行きで出場した祭りのムエタイの試合でトゥムは勝ち、賞金を手にする。そして彼は、家族のためにお金を稼ごうとプロのムエタイ選手となることを決意する。

2003年 タイ アートポート
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Re: 「ビューティフル・ボーイ」
投稿日 : 2007/04/18 16:00
投稿者 久保田r
参照先
 なんとも数奇な運命の持ち主。性同一性障害であるパリンヤー(愛称:トゥム)の半生を描いた映画なのだが、パリンヤーのこれまでの運命の選択がことごとく極端な方向へと向かっていて、突出した人生となっている。性同一性障害という人生最大の運命に家が貧乏であるということがパリンヤーの運命を大きく左右している。

 心と体とお金。お金は、性別を関係なく生きていく上でなくてはならないものなので、お金を得る為に体を張るということは、男性でも女性でもあり得ること。それがパリンヤーの場合は、たった一度の勝利でムエタイへと導かれていったので、必要以上に人々の好奇心の目にさらされる運命となった。

 ムエタイという過激なスポーツに立ち向かう姿勢を見ていると、パリンヤーは男性としても心がけのよい青年だと思う。しかし、パリンヤーの心は、試合に勝ってもその喜びよりも女性のように美しく装いたいという願望がしだいに強くなってゆき、試合を重ねるごとにパリンヤーの化粧は次第に濃くなり、男らしいスポーツとの見かけのバランスが大きく離れていく。極めつけは、パリンヤーを育てたコーチの死で、コーチの死の以後、パリンヤーは、自分をここまで成功へと導いたムエタイよりも心の悩み一辺倒になり、追い詰められ、性転換手術を決心する。

 パリンヤーにとってムエタイは、お金を得る手段という以外に何だったのだろう。やめようと思えばやめられた筈なのに、敢えて生きている証を欲するかのように過酷なスポーツを続けていたように思える。性転換手術をした後は、またもや人々の注目を浴びる仕事、女優業に就いている。パリンヤーは、自ら進んで刺激のある運命を選んで生きているような気がする。心と体が一致した後も、ナイフの刃の上を歩くかのような運命が続いている。

 映画を振り返ってみると、ムエタイという男らしいスポーツの選手でありながら、心はいかに女性らしかったかを示すかのような立ち居振る舞いが多い。パリンヤーの”こうであって欲しかった”という願いが反映しているように思われるが、東京ドームで行われた井上京子選手との試合は、なかなかの見応えだった。井上京子選手の迫力も伝わるし、比較して打ちのめされるパリンヤーの心境もよく伝わってくる。全体的にシナリオの流れは丁寧で無理矢理感が少なくて好印象。映像も綺麗で、タイの豊かな色彩の中でじっくりと一人の人間の運命を見ることができた。
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