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「誰がために」
投稿日 : 2010/09/06 17:00
投稿者 久保田r
参照先
<スタッフ>
監督:日向寺太郎
製作:薮下憲一、川越和実、鈴木ワタル
プロデューサー:有吉司、河野聡、多井久晃、大橋孝史
企画:深田誠剛
原案:日向寺太郎
脚本:加藤正人
音楽:矢野顕子

<出演>
浅野忠信/エリカ/池脇千鶴/小池徹平/宮下順子/烏丸せつこ/小倉一郎/眞島秀和/菊池凛子/香川照之、他

<ストーリー>
急死した父の跡を継ぎ、写真館の三代目として暮らしていた民郎は、幼馴染みのマリの友人の亜弥子と出会い、やがて妊娠を機に結婚する。周囲から祝福され、穏やかに暮らしていたある日、亜弥子は、自宅で首を絞められて殺される。

2005年
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Re: 「誰がために」
投稿日 : 2010/09/06 17:03
投稿者 久保田r
参照先
 商店街に佇む写真館の3代目、民郎は、以前は「日本のキャパ」を口癖に、世界中を撮影して歩いていたカメラマン。パレスチナで撮影した幼い女の子の写真を自分の家の写真館に飾り、この写真をきっかけに亜弥子と急接近する。命の価値と家族とについて語り合う二人は愛しあうようになり、亜弥子の妊娠を機に結婚する。ある日、書店からの帰り道、亜弥子は見知らぬ少年に尾行され、民郎が不在の時、自宅でこの少年に首を絞められて殺される。亜弥子を殺害した少年は、少年法に守られ、軽い刑で少年院を出所。雑誌記者からそのことを知った民郎の胸中に復讐の殺意が芽生える。

 この作品の解説を読むと社会派人間ドラマ…ということらしいのだが、確かに社会派ドラマな部分もあり人間ドラマ的な部分もあったが、全体を大きく包んでいるのは民郎の亜弥子への思いであり、生まれる筈であった家族へのロマンであり、そして民郎と亜弥子のラブストーリー…というのが作品全体を通している軸であるように感じた。

 パレスチナでカメラを通して人の生死を体験した民郎と、幼い頃の両親の離婚で父親を知らずに育った亜弥子は、出会うべくして出会った魂の片割れのような二人であり、結婚して子どもを育てるということは、二人にとってとても意味のあることであったと思う。それだけに民郎の亜弥子への想いは深く、理不尽に殺された亜弥子のことを思うと、沸々と暗い復讐の炎が燃え上がるのも分かるような気がした。民郎は、一見すると穏やかな雰囲気の青年であるが、事件を境に胸の内に深い心の闇を抱えるようになり、母親や幼馴染みのマリの前では普通にしていても、一人になると悲しみとも怒りとも絶望とも言えぬ複雑な沈んだ表情で暗い室内でナイフをじっと見つめるようになる。作品の終盤に向け、民郎を演ずる浅野忠信さんの表情に少しずつ変化が表れ、意志が徐々に固まっていくところが窺えるところが良かった。

 凶悪な少年犯罪が増えつつある日本。少年法に守られ、被害者の訴えが届かない現状であることをこの作品は描いている。愛する者を理不尽に奪われた山よりも高く海よりも深い悲しみ。命の価値──。それをこの作品は伝えたかったのではないだろうかと思う。

 追記。
 普段とはガラリとイメージの異なる少年犯罪者役を演じた小池徹平さんがなかなか迫力があった。優しげな風貌から未成年者特有の内なる冷酷な怖さが漂っていた。
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