＜スタッフ＞
監督：石黒昇、河森正治
演出：秋山勝仁、笠原達也
製作：大西良昌、吉田憲二
プロデューサー：井上明、岩田弘、榎本恒幸
原作：スタジオぬえ
脚本：富田祐弘
ストーリ構成：河森正治
キャラクターデザイン：美樹本晴彦
作画監督：板野一郎、平野俊弘、美樹本晴彦、坂野一郎
美術監督：宮前光春
撮影監督：橋本和典
編集：三木幸子、谷川幸男、田岡克美、厨川治彦、吉田ちひろ
音響監督：本田保則、松浦典良
音楽：羽田健太郎

＜キャスト＞
リン・ミンメイ：飯島真理／一条輝：長谷有洋／早瀬未沙：土井美加／ブルーノ・J・グローバル：羽佐間道夫／クローディア・ラサール：小原乃梨子／ロイ・フォッカー：神谷明／ゴル・ボドルザー：市川治／ブリタイ・クリダニク：蟹江榮司／エキセドル・フォルモ：大林隆介／リン・カイフン：鈴置洋孝／マクシミリアン・ジーナス：速水奨／ミリア・ファリーナ：竹田えり／柿崎速雄：鈴木勝美、他

1984年　東宝

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　1982年から翌年まで放送された大人気TVシリーズの劇場作品。異星人との戦いと男女の三角関係を描いた作品で、キャラクターの歌う劇中歌がヒットし歌と声を担当した飯島真理さんが複数の歌番組に出演するなど社会現象となった。

　2009年、南アタリアで進宙式を行っていたマクロスは、突如異星人のゼントラーディ軍から襲われる。ロイ・フォッカー率いるヴァルキリー隊が応戦するが、マクロスは緊急フォールド航法を開始。システムの誤作動により冥王星付近まで飛ばされてしまう。地球帰還まで7ケ月間を要す艦内では人びとが街を建設し、アイドルのリン・ミンメイがファースト・コンサートを開いていた。

　一応TVシリーズの劇場作品であはるけれどもTVシリーズの総集編でもなく、続編でもなく、TVシリーズのストーリーと設定を下地にして時間内に収まるように新たに構築した作品…というのが特徴。全36話に及んだTVシリーズの内容を1本の劇場作品にまとめているため、設定の面では説明不足が多く駆け足的な描写となっていてやや分かり難い作品ではあるが、ストーリーの面ではTVシリーズを通して描いた「マクロス」のテーマがコンパクトにまとめられているためキャラクターの関係が分かりやすく仕上がっている点は長所。また、セル画を多数重ねることで独特の映像美を実現している点も高い評価。

　序盤からヴァルキリーのアクションシーンが登場しメカニック重視な作品なのかと思いきや、パイロットの一条輝がアイドルのリン・ミンメイを助けたところから比重はあれよあれよとラブ・ストーリーの方向へ。「マクロス」の第一の特色は”戦いとアイドルの歌の両立”であるため、生死をかけた戦いとリン・ミンメイの歌う歌が二本柱。戦いに臨む軍人とアイドルの恋愛は、作品にとってなくてはならないストーリーの要となっており、この若き二人の初々しい恋愛シーンは戦いの中の一服の清涼剤…というよりも、むしろ恋愛に絡む人間模様があってそこから戦いへ臨むというのが「マクロス」の「マクロス」たる所以。そのことがよく分かるストーリー構成となっている。

　TVシリーズでは色んなキャラクターが登場してはすったもんだを繰り広げる恋愛事情も、ここではスパっと整理して三角関係の登場人物に絞ってマクロスが地球に帰還するまでの流れを作り出している。と、同時にゼントラーディ軍にミンメイと歌の存在を知らしめ、「文化」こそ守るべき大切なものとして印象づける流れをも作り出しており、それらが終盤で結実するシーンは爽やかな達成感を覚えるほど。TVシリーズから作品を知るファンには物足りない点も多々あろうかとは思うが、どんな人にも”「マクロス」とはこういうテーマの作品である”をまとめているという点では見やすい作品だと思う。

　全編を通してミンメイの歌とBGMの「ドッグ・ファイター」が鳴っている印象。「ドッグ・ファイター」の高揚感のあるメロディーに乗って繰り広げられるヴァルキリーのアクション・シーンは爽快。躍動感のある音楽と共に板野サーカスの妙技を堪能できる。そして、終盤の大決戦時に流れるリン・ミンメイの歌う「愛・おぼえていますか」は圧巻。歌声がどこまでも高らかに伸びやかに美しく響いている。戦いのシーンと歌のシーンの両立。これぞ「マクロス」の醍醐味であり真骨頂。

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