「破れたハートを売り物に」
投稿日 | : 2017/06/13(Tue) 13:06 |
投稿者 | : 久保田r |
参照先 | : |
「オヤジファイト」
監督:三島有紀子
出演:マキタスポーツ、渋川清彦、岸井ゆきの
歌:「らせん階段」
「父と息子」
監督:榊英雄
出演:船越英一郎、大森南朋、なつみ、咲希、田山由起、甲斐祥弘
歌:「安奈 -2012-」
「この柔らかい世界」
監督:長澤雅彦
出演:松田美由紀、手塚真生、西澤愛菜、深瀬美月、石原裕久
歌:「そばかすの天使」
「熱海少年探偵団」
監督:橋本一
出演:山田瑛瑠、永瀬匡、清野菜名、榊英雄
歌:「漂泊者(アウトロー)」
「ヤキマ・カナットによろしく」
監督:青山真治
出演:光石研、片岡礼子、川瀬陽太、玄里、甲斐祥弘
歌:「HERO(ヒーローになる時、それは今)」
エンディング・テーマ:「破れたハートを売り物に」
2015年
Re: 「破れたハートを売り物に」
投稿日 | : 2017/06/13(Tue) 13:08 |
投稿者 | : 久保田r |
参照先 | : |
甲斐バンドの曲をモチーフにして製作された短編映画集。5人の監督が腕を振るい、劇中にそれぞれ1曲ずつ甲斐バンドの歌を使用して独自の世界を展開している。
タイトルを見てピン!と来た人は間違いなく甲斐バンドを知っているし、そこから興味を持って見始めたなら甲斐バンドの歌が流れることを期待するし、となるとご本人の登場はあるのか?ということまで期待してしまうのが人情というものだが、そこはやはり外さずにきちんとツボを押さえている甲斐バンド40周年記念短編映画集。
甲斐よしひろさんは、2作品に出演。内「ヤキマ・カナットによろしく」では、ブルースハープを朗々と披露。作品の締めでもあり、映画全体の締めでもあるシーンをご本人が渋く飾られている。
映画全体は、現実的な内容から始まり、しだいに非現実的な夢の中なのか妄想の中なのかといった世界が描かれ、再び現実世界に戻ってという流れ。全体の印象はバイオレンスの一言。「父と息子」は、直接的な表現はないものの船越英一郎さんの演じる田舎の父親像は寡黙な威圧感が漂っていて泣く子も黙る雰囲気。全編白黒映像となっている点がいい味を出している。
「熱海少年探偵団」は、5作品の中でダントツのバイオレンスさ。監督は、「相棒」シリーズを多く手がけている橋本一さんで、視覚的な恐怖と心理的な恐怖を描きつつ、主人公を少年としていることによってバランスが取れている感じ。しかし、作品のラストにこの年齢の少年が知る筈もないであろう「漂泊者(アウトロー)」を口ずさんでいるところにはちょっとした怖さもある。過激な暴力を振るう青年役を演じた永瀬匡さんが、美形特有の冷たさで目線を惹き付けている。
「オヤジファイト」は、全くもって報われない中年男性の独り善がりを描いており、それが滑稽でもあり愛おしくもあるストーリー。マキタスポーツさんの独特の存在感はもとより、ボクシングジムのオーナーの人情味のある言葉と行動が全体を導いていた。BGMのセンスもよく、暗い内容ながらも見やすい作り。
「この柔らかい世界」は、女性の持つ暗く深い憎しみと悲しみを描いている作品。負の連鎖がテーマとなっており、救いが感じられないほどの追い詰められ感が全編に漂っている。しかし、血の繋がりが辛うじて正気を保たせている。松田美由紀さんのキレのある演技が印象的。
「ヤキマ・カナットによろしく」のヤキマ・カナットとは、その昔ハリウッドで活躍し成功したアクションの演技者のこと。作品では、怪我をしたスタントマン役を光石研さんが演じ、女性のバーテンダーに向かって博多弁でプロとは何かを捲し立てるように話しているのが切なく映し出されている。劇中で流れる「HERO(ヒーローになる時、それは今)」の歌詞に哀愁を覚える作品。(尚、この時店内でかけたアルバムは2013年リリースの「ROCKS」)
鑑賞後に思い出したことは、かつてアルバム「LOVE MINUS ZERO」のプロモーションの一環で、曲名を冠したハードボイルド短編小説集を刊行したこと。今回は曲名は冠してはいないものの、映画通である甲斐さんの意思を汲み取った短編映画集となっていることは明らか。甲斐バンドファンには納得の映画となっているし、昨今にはないザラッとした感触の仕上がりの映画をお求めの方にも。
追記。
タクシーの運転手がサングラスをしてたらアカン。