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「衆楽苑」 小山田いく
投稿日 : 2007/11/26 18:18
投稿者 久保田r
参照先
 上野駅のすぐそばに建つ架空の食堂「衆楽苑」が主役の漫画。和洋中の料理の他にソフトドリンク、アルコール、デザートまでほとんどの飲食が揃っている大衆向けの食堂。この食堂を舞台に繰り広げられる”ちょっといいお話”が、短編連作集という形で綴られている。漫画雑誌「チャンピオン Jack」1994年〜1995年掲載。

 上野駅は、”北の玄関口”として知られる大きな駅で、石川啄木が「故郷の訛りなつかし停車場」と短歌を詠んだ駅としても有名。この作品も地方から上京し、様々な思いを抱えて上野駅を見つめる様々な人間たちが登場してドラマを見せてくれる。

 現在でこそ”北の玄関口”という意味合いは薄らいだが、その昔、東北新幹線が大宮駅から東京へ延びた時、しばらくの間は上野駅が始発であり終点だった。石川啄木が短歌を詠んだ時代から何十年という時を経ても”北の玄関口”でありその役割を果たし続けた。この作品は、現代版の「故郷の訛りなつかし停車場」を漫画で分かりやすく描いた、日本人にとってどこか懐かしくもほろ苦い思いのする心に染み入る作品だと思う。

 作者は、鉄道が趣味の為、上野駅発着の列車についても詳細に描写している。列車は、様々な人間達の一人一人の思いを運んで上野駅に停車し、上野駅を出て行く。ドラマが生まれドラマが終わる場所である上野駅。美味しいと評判の「衆楽苑」の料理には、そんな人々のドラマが隠し味となっている。

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