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「青春♂ソバット」 黒娜さかき
投稿日 : 2010/09/27 17:44
投稿者 久保田r
参照先
2008年3月5日 (株)小学館 IKKICOMIX

 男子高校生の友情か恋か。というか、恋という甘いムードではないので”男子高校生の友情かゲイか?”が、適切なところかと思える性を取り扱った作品。

 掲載雑誌は月刊IKKIという漫画雑誌で、IKKIといえば私がハマった「鉄子の旅」を掲載していた雑誌で、「鉄子」を扱っていた雑誌が「青春♂ソバット」を扱う???と、疑問符だらけの展開なのだが、えてして青年誌はジャンルに縛られずに様々なタイプの作家の作品をバラエティよろしく掲載するものなので、黒娜さかきさんの作品の掲載についても時代の風潮に乗っかった試みであるような気がする。連載作品なので、今後どのような内容のストーリーとなって行くのかは、編集と作家自身の気持ち次第というところかと思う。

 掲載誌が青年誌だからか、複雑なコマ割はなく四角割を基本とした読みやすさ優先の構成となっており、かつキャラクターの絵柄もはっきりとした力のある線。女性が読むにはカッチリ感を覚えるが、近年定着したボーイズラブ作品というよりもゲイを扱った作品という意識の表れが感じられる。

 ストーリーや内容については、作品自体がまだまだ始まったばかりであるので未だ何とも捉えどころがないというのが正直なところなのだが、女子高が共学となり第1期生で入った数少ない男子同士でくっつくのかくっつかないのか?という設定が面白味のあるところ。今ドキの高校生の大人びた危うさも描かれてあり、適度なハラハラ感がある。また、黒娜さんらしいバイオレンスさも。周りを見渡せば女子がよりどりみどりいる学園生活で、ゲイの白洲と童貞の有田が”友情かゲイか?”どちらを取るのかが今後の見所。

<収録作品>
「ボディー・ブロー」「ネリチャギ」「サマーソルトキック I」「サマーソルトキック II」「サマーソルトキック III」「エスキーヴァ」

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第4巻
投稿日 : 2013/10/24(Thu) 17:14
投稿者 久保田r
参照先
2011年3月3日 (株)小学館 IKKICOMIX

<収録作品>
「アッパーカット」「ワンツーパンチ」「ジャンピングニーパット」「ジョルトブロー」「スイッチ」「K.O.」「TKO」「ウイニングラウンド」「青春♂ソバット 完結によせて」「ギフト」


 クリスマスイブの夜、有田と白洲は、ベッドの上で触り合いっこをして過ごす。白洲は相変わらずタツローが実父だというショックを引きずっていたが、クリスマスの朝には、二人で学校をサボって海へと向かった。有田の言動の一つ一つが白洲の心を揺り動かすが、白洲にはまだ有田のことが好きだという自覚はなかった。海からの帰り道、白洲と別れた後、有田は携帯電話のメール受信に気づく。それは美穂子先輩からのメールで「会いたい」という内容のもの。付き合っていた男と別れた美穂子は、白洲と共に遠くへ行きたいと訴える。激しく動揺する有田であったが、美穂子とかけおちするために駅へと向かう。そのことをメールで知らされた白洲は…。

 起承転結の「結」にあたる最終巻。前巻で「転」の展開として登場した金髪の滝川と猫好きの星野がよい働きをしており、脇で方向性をガイドしつつふらふらとした気持ちで鬱々としている白洲の背中を押している。ゲイの白洲にとって友達でありノンケである有田とそういう関係になることは、一線を越え難い存在であり、また相手が男であろうが女であろうが本能のままに行動する有田は、デリケートな白洲の心の動きについて行くのがやっと。頭で考える理性と欲望のままに動く体とのちぐはぐなバランスが、大きなトラブルを抱えたことによってようやく一つの結果に向かうという多感な十代のドタバタなラブストーリーが描かれている。

 それぞれにタイプの異なる有田と白洲は、友人関係として望ましい相性であると思う。お互いの価値観の違いを認め合えたら長い付き合いの友人になれると思うのだが、しかしこの二人はお互いに相手に「性」を感じ取り友人以上の何かを求めたために苦しい選択を迫られることとなった。周囲の人間関係とのもつれの中、ようやく決着を見た二人の関係は、一抹の安堵感が漂っていてよかった。

 青年誌で連載された当作品は、第1巻ではまださほどはっきりとした方向は見えていなかったが、ストーリーの決着が有田と白洲の関係に絞られてからはボーイズラブ的な要素が濃くなり、私的には納得しやすいまとめの終わりとなっていて良かった。とはいえボーイズラブ専門誌でこの作品が受け入れられるかというとそうでもなく、青年誌に於いてもBL誌に於いてもマイノリティな作品であることに変わりはないと思う。どっちつかずと言えばそうなのかも知れないが、しかしこの作品は、分かりやすい男×男の肉体関係の見せ場だけではない枠に囚われない自由さと、枠が無いが故の不自由さとが作中の表現にも滲みでており、登場人物の10代の少年たちの心理とも重なってより効果的な相乗効果となっていたように思う。そこに「LOVE」はあるが、LOVEを上回る少年達のパワーバランスが描かれている。脆そうに見えて実は強固な繋がりを感じられる男同士の触れ合いを味わえる作品。

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第3巻
投稿日 : 2011/11/08 16:41
投稿者 久保田r
参照先
2010年3月2日 (株)小学館 IKKI COMICS

<収録作品>
「サミング」「空手チョップ」「DDT」「初発刀」「ジャイアントスイング」「インファイト」「星野君と猫」


 前巻でケンカが原因で謹慎処分となった有田と白洲が、処分明けとなり、再び高校に戻ったところからスタート。謹慎中に有田は、白洲の兄と名乗る男性が実は白洲の実父であるという重大な事実を知ってしまい、動揺の日々を送る。白洲は、その兄と思い込んでいるタツローという名の男性のことを幼い頃から一途に好きだったため、その思いを知っている有田は告げるべきか告げざるべきかでひたすら悩む。そして、タツローの誕生日の日、有田は遂に決死の行動に出る。

 白洲の思い詰めてる表情と行動が痛々しくて切ないほどで、10代後半の男の子の行き場のない危険な感情といったものが描かれてあり、一歩間違えば犯罪にもなりそうな危うさが全体を覆ってあり、読んでいる側も痛く切なくなるような展開でよかったと思う。ギリギリの危うさと香るようなバイオレンスさが作者の持ち味。

 有田の告白によってタツローが父だと知った後の白洲は、交際中の男性との肉体関係を進める。そして、クリスマスが近づき、有田と白洲のグループに猫好きの星野が接近し始め、滝川と星野を入れた4人で滝川の家の近くの銭湯で手伝いをするハメに。刹那主義な男子高校生たちの、寂しいような賑やかなクリスマスが描かれている。
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第2巻
投稿日 : 2010/12/19 18:01
投稿者 久保田r
参照先
2009年3月2日 (株)小学館 IKKICOMIX

<収録作品>
「エスキーヴァ II」「右ストレート」「クリンチ」「出足払」「アームロック」「R-15」


 女子高から共学高へと変わったばかりの高校へ入学した有田の青春トラブル・ストーリー。男子の少ない高校で女子にモテまくるという薔薇色の高校生活を夢見て入学したものの、なぜか気になるのは同級生男子の白洲のこと。真性ゲイの白洲とは馬が合うというわけでもなく、口を開けば衝突することも多いのに、なんとなくつるむうちに二人の距離は縮まっていく。そこへ運命の学園祭が行われ…。

 第2巻となっても有田と白洲の関係は微妙なまま。性に対して奔放な白洲に対し、有田は童貞のためかロマンチックなことばかりを想像しているため、お互いの価値観が大きく異なっており、衝突を繰り返すばかり。有田と白洲のどちらの態度が正しいということもない思春期の性衝動が学校生活と絡んで描かれている。

 一般的な家庭で育った有田には、白洲の家の複雑な事情は刺激的で、分からないことだらけ。同い年でありながらあまりにも違う白洲家の境遇に巻き込まれていく有田が気の毒に思いつつも、刺激と冒険を求める10代の若者の好奇心がストーリーに沿って絶え間なく描写されてあり、思春期特有の不安定さを味わえる作品。そこかしこにバイオレンスな「匂い」が感じられる。
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