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「聖☆おにいさん」 中村光
投稿日 : 2011/01/28 17:13
投稿者 久保田r
参照先
 講談社漫画雑誌「モーニング・ツー」にて2007年より連載中の作品。主人公は、キリスト教の開祖であるイエス・キリストと、仏教の開祖であるブッダの二人。二人は、天界にて活動していたが、世紀末を乗り越え、バカンスを楽しむために下界に降りて「聖」という名字を名乗って東京都立川市にある風呂なしアパートで暮らしている──という内容。

 下界で暮らすイエスとブッダの外見は、20代後半の青年っぽい若者の姿で、宗教用語を書いた白地のTシャツ(所持している3割以上のTシャツは、ブッダの趣味のシルクスクリーンで作ったもの)に、ボトムはジーンズ。髪型は、イエスはウェーブのかかったロン毛に、GPS機能のついたマジックテープで留めるタイプの茨の冠をしており、ブッダは、螺髪に大きな耳たぶと額に白毫があるのが特徴。見た目からして個性的な二人が、立川を舞台に下界でのバカンス(生活)を満喫する。

 ブッダもイエスも、それぞれの宗教の開祖として何千年にも渡って崇められ語り継がれてきた存在であるので、この二人が主人公であるというだけでもインパクトがあるし、またこの二人が主人公となる漫画を描けるのは、世界広しといえども日本ぐらいではなかろうかと思う。日本では、人々の生活の中に仏教の教えとキリスト教の教えが何気なく入り込み、一年を一区切りとした暮らしにリズムを与えているので、実のところは両方とも馴染みの深い存在。漫画の中では、二人は現代日本の文化と暮らしを思う存分満喫し、イエスはパソコンに強く、ブッダは漫画を描くといったお互いの趣味と特技を活かして楽しく生活している。いわば、自分たちの教えが暮らしの中に染み込んだ下界で本人たちがその暮らしを楽しんでいるというもの。人々が長い年月をかけて生活に溶け込ませてきた宗教と触れあう二人の行動がなんとも微笑ましい。二人とも性格が穏やかで、且つユニークさを持ち合わせており、劇的なドラマチックな展開はないけれども、開祖の二人が現代日本の生活を満喫しているという点に於いて、ほのぼのとして楽しく読むことのできる作品としておすすめ。

 私は、この作品を書店に置いてある最初の1話分だけ収録した薄い試し読みの冊子を読んだ途端にファンになった。大胆な発想のもとに描かれる、2大宗教の開祖の下界での日常生活振りが魅力。イエスとブッダのエピソードが作品の中にさりげなく盛り込まれ、親しみやすさがある。天界にいる二人の弟子との触れ合いもユニーク。穏やかながら一度読むと忘れられないインパクトのある作品。おすすめ。

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