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「モテキ」 久保ミツロウ
投稿日 : 2011/04/20 16:44
投稿者 久保田r
参照先
 講談社の漫画雑誌「イブニング」連載作品。コミックは全4.5巻。本編の終わりとしては全4巻。.5巻は、いわゆるファンブックで、番外編と作者インタビュー等が収録されている。タイトルの「モテキ」とは、「モテ期」のこと。

 ”アラサー”の藤本幸世は、彼女いない歴=年齢という異性からモテない暗く寂しい人生を送ってきた。定職にも就けず派遣社員をして収入を得ている。ある日、派遣先の元同僚の土井亜紀から突然電話がかかって来る。この電話を機に藤本幸世は”モテ期”を迎えるが、モテない期間が長過ぎたばかりに内向的で消極的な行動ばかりをとってしまい、いつもここぞという時に一線を越えられない。本人も周囲もやきもきする中、複数の女性と連絡をとり続ける藤本幸世。さぁ、念願の彼女を作ることはできるのか!?…というお話。

 書店に置いてあった最初の1話分だけ収録された試し読み用の薄い冊子を読んだ時に面白いなと思って大人買いして一気読みしたのだが、2巻目に入った辺りからちょっと後悔…というか胸焼けに近い感じに重苦しさが募り、かわいい女のコの裸や下着姿の登場に読みやすさはあるものの、中味は案外とヘヴィーだぞということに気づいた。というのも私自身が主人公の藤本幸世に近いものがあり、現在では縁があって恋愛結婚をして子供もいる身分だが、結婚前まではモテない人生だった。そのため作品に於ける藤本幸世の内向的で自虐的で消極的な思考と行動には、かつての自分とかぶるところがあって辛かったというのが、私の感じた個人的なヘヴィーな理由。

 さて、作品。ちゃんとした彼女が欲しい!を全力で叫んでいる内容で、主人公の藤本幸世は、厳密には童貞ではないものの、でもほぼ童貞に近い立場ながら、友達の前で大声で異性とそのテの言い争いをしたり、彼女未満の女友達に初体験を語らせたり、二人きりになるとすぐにキスをしたりと、情に流されやすいというか気の多いタイプ。そのため、付き合う前に誤解されたりフラれたりと藤本幸世のデリケートなハートは傷つきまくりだが、ラストには勇気のある行動力を見せ、一番脈のある美人とやっと堂々と正式に付き合えそうだ…というところでストーリーの幕が降りている。

 私から言わせると、なんだかんだ言いつつも好意を寄せる女性とはキスをするし、ホテルにも入ったりで(最後まで出来ないが)、全然モテないわけじゃなくて、その逆で、男性女性問わず友人が多数いるモテるタイプのいいヤツじゃん…というのが率直な感想。キャラの設定として恋愛に固執しているためか、自分はモテないと思い込んで行動しているようだが、周囲をよく見回すと意外と愛情と友情に囲まれており、根が優しいがために振り回されている主人公という感じ。周囲に気を遣うがゆえに流されてしまうことの多い繊細な人には身につまされる作品だとは思うが、大声で表現することの難しい心の奥の柔らかいヒダの部分をざっくりと切り開いてドラマにしている。堂々と傷を見せる。そんな意外な強さを持ち合わせている作品。ちなみに私的に気に入ったキャラは、林田尚子。

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