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「機動戦士ガンダムUC/虹にのれなかった男」 葛木ヒヨン:コミカライズ/福井晴敏:シナリオ
投稿日 : 2014/05/30(Fri) 15:12
投稿者 久保田r
参照先
2013年9月26日 角川コミックス・エース

 「機動戦士ガンダムUC」の原作者の福井晴敏さんがシナリオを手掛けた完全オリジナル作品。「1st」「Z」「ZZ」「逆シャア」そして「UC」までをガンダムのパイロット及びニュータイプと呼ばれる人間たちと接してきた艦長、ブライト・ノアを主人公として数々の戦いと心情とを振り返っている内容。

 アクシズの落下を阻止し地球壊滅の危機を救ったロンド・ベル隊の指揮官であるブライト・ノアは、とあるスペースコロニーの招きに応じて政府公館を訪れた。入った部屋に人影はなく、暗い室内にいくつものモニターの明かりだけが灯り声だけが響いていた。声の主は地球連邦軍上層部で、アクシズの落下を阻止した際に地球を取り巻いた光の正体について審問するというものであった。あの光とニュータイプとの繋がりを問われたブライトは、一年戦争で出会ったアムロ・レイについて思い起こす──。

 審問に応えながら一年戦争、グリプス戦役、第一次ネオ・ジオン抗争、第二次ネオ・ジオン抗争で戦った各ガンダムのパイロットとシャアのことをブライトの視線から振り返るというもので、ここで描かれているのはブライトの苦悩と後悔ばかり。不器用ゆえに上手く立ち回れなかった己を脳裡で責めつつ、表面上は決して自暴自棄にならずに慎重に受け答えする大人の姿勢のブライトが描かれている。

 各作品の主役ではないものの、ガンダムを乗せた艦の艦長としガンダムのパイロットを見届けてきたブライトは、シリーズを一つの線に繋げる重要な存在。現場と上層部との中間に立ち、時に殴られ、時に戦局を左右する交渉の場に臨み、いつだって生き延びるために懸命な努力をしてきた苦労人ブライトの内なる思いをたっぷりと読むことのできる内容となっている。

 ここで描かれているブライトの心情は、キャラクターのファンならば概ね想像したことのある内容ではないかと思う。こういう苦悩こそがブライトの魅力であり、切ないところ。苦労人であるがために齢を取ってからは平穏な幸せを手にして欲しいと願う人物なのだが、そうはならないのは「閃光のハサウェイ」が示す通り。切な過ぎる彼の人生を思うと、こういうスポットライトを浴びた作品は多少面映くもあるが、まとめとしては適度な分量かと。

 「虹にのれなかった男」というタイトルが言い得て妙。ブライトの立ち位置を的確に表現しているように思う。そして作中にはカムラン・ブルームも登場。二人の対面はないものの「1st」からの繋がりと「逆シャア」での働きがここでも活きている。そして時代は次のステージへと。「UC」が「逆シャア」の続きであることが分かる締めくくりに納得。

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