トップページ > 記事閲覧 
「鉄子の旅」 菊池直恵
投稿日 : 2008/10/21 16:42
投稿者 久保田r
参照先
 2002年〜2006年までの間、小学館の漫画雑誌「IKKI」にて掲載されていたノンフィクション鉄道漫画。単行本は全6巻。作者と担当編集者と旅の案内人となるトラベルライターの横見浩彦氏の3人が、毎回「お得」な切符を使い倒して「ローカル線」を乗り潰す「テツ」にとっては当たり前の旅を作者の視線からレポートしている漫画。

 この作品は、アニメ化もされていて、レンタル店でちらっと見かけたことがあるが、大体にして「鉄子」という呼び名が”鉄道が大好きな女性”というイメージが強く、原作のコミックに至っても敬遠して読む気がしなかったのだが、私事で恐縮だが、2008年の夏に岩手・愛知・東京を家族旅行した際、移動に新幹線を利用し、最終日に鉄道好きの次男坊のために話題の鉄道博物館に行き、その帰りの新幹線の「はやて」の車内で「鉄子の旅プロデュース 日本縦断弁当〜ぎっしり東海編〜」を食べ、その際お弁当についていたオマケマンガを読んで、(なんか思っていたのと感じが違う。これなら読めるかも)と思い、旅行から帰るなり全巻買い揃えて一気に読んだという次第。

 「鉄子」とは、字のイメージの通り「女性の鉄道ファン」を称す呼び名であるけれども、作品の唯一の女性レギュラー・キャラクターである作者の菊池直恵さんは、旅は普通に好きだけれども鉄道にはさして興味がないごく普通の一般女性。旅の案内人の鉄ヲタ・横見浩彦氏の計画するスケジュールがあまりにも内容が濃く、ハードなものである為、仕事を通して否応なしに鉄道の知識が蓄積され、連載終了時には「鉄子」と呼ぶに相応しい成長(?)振りを見せたが、それでもやはり感覚的には「普通の人」。一貫して作者の感覚が「普通」だったので、その点が良かった。旅(話)が進むうちに「鉄道バンザイ!」的なキャラになってしまったら、この作品の良さはおそらく半減してしまっていたと想う。鉄ヲタの横見氏、鉄ファンの編集者、普通の作者の3人のそれぞれの感覚と個性が、時には衝突し時には共感しあった様子が描かれていたことで、この作品は、幅広いファンを呼び込む結果に繋がったのだと思う。

 それにしても鉄ヲタ・横見浩彦氏の情熱は凄い。仕事とはいえ作者はよくこういう人と旅を続けたと思う。また、編集者もこの二人の間に入るという立場をよくこなしたと思う。旅の実践を二人だけに任せず、自らも当事者となって3人で旅を続けたことが、この作品の長所だと思う。(もともと編集者も鉄道好きのようだけど、「鉄子」以外の仕事もあるわけだから)

 「鉄子の旅」を読んでいると、横見氏ほどの過剰な情熱は勘弁だが、ほんの少しならローカル線の旅を経験してみたい気持ちになって来る。作品に描かれた駅や列車を実際に体験してみて、自分は果たしてどのように感じるのだろうかと、試してみたい気持ちが沸いて来る。差し当たり、第1巻収録の第7旅「岩手県の自然を味わう旅」に登場した、岩見線、押角駅へ行き、あの圧倒的な雰囲気を肌で感じてみたいと思うこの頃。

記事編集 編集
「鉄子の旅 プラス」
投稿日 : 2009/08/02 15:19
投稿者 久保田r
参照先
2009年3月2日 小学館 IKKI COMIX

 6巻で終了した「鉄子の旅」の続刊…というか増刊号のようなノリの新刊。作者と横見氏と編集担当者の3人のローカル線の旅という内容ではなく、連載終了後に起きた色々な出来事のレポートがメインとなっている。アニメ化、小説新潮との相互乗入れ企画、「特急田中3号」のロケ同行、作者プロデュース「日本縦断弁当」などなど…アニメ化にまつわるエピソードをメインに、情報ページを挟みながらレポート漫画が収録されている。

 エピソードやイベントのレポートばかりではなく、企画絡みの旅もいくつかしていて、その旅の漫画レポートもあり。この旅漫画レポートに関しては、「鉄子」の続刊とも言える従来の漫画レポとなっていて、相変わらずハイテンションの横見氏と、巻き込まれる一行の様子が描かれている。

 原作が漫画のアニメ化で、ここまで詳細にレポートしているのも珍しいかも知れないと思った。実録漫画のアニメ化自体が珍しいことなので、それだけにエピソードが色々とあったのだと思うが、実在している人物をキャラクター化し、それを作者本人がレポートしているので、さぞかし照れくさい思いがするのだろうなという想像をしつつ、なかなか愉快でユニークな試みとなっていて楽しく読むことができた。

 小説新潮と相互乗入れ企画も読み応えがあって楽しかった。同じ旅を漫画と活字のエッセイでレポートしてあり、それぞれの作者の感じ方が表れていて楽しかった。そして、ところどころに登場する「その時、横見は…」のコラムがなかなか面白い。「トラベルライター」である横見氏本人がなんと(!)文章を書いている。
記事編集 編集
件名 スレッドをトップへソート
名前
メールアドレス
URL
画像添付


暗証キー
画像認証 (右画像の数字を入力) 投稿キー
コメント





- WEB PATIO -