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「世紀末同人誌伝説」 同人誌糾弾委員会 作・水谷潤/画・藤宮幸弘
投稿日 : 2005/10/05 10:43
投稿者 久保田r
参照先
昭和63年9月9日 ピラミッドコミックス

 今から17年前発行の本。昭和63年(1988年)と言えば、青函トンネル・瀬戸大橋が開通した年であり、東京ドームが開業した年であり、現在の米大統領・ブッシュの父親が第41代大統領に当選した年であり、光GENJIの「パラダイス銀河」がヒットした年であり、長渕剛の「乾杯」がヒットした年であり、Wの加護亜依ちゃんが生まれた年。この頃の同人誌業界を憂えて発行された本。

 同人誌業界と言ってもジャンルは幅広く、この本では、その頃特に無知ゆえに悪質であった「やおい」について厳しく批判している。既存のアニメ作品のキャラを使い、性的描写を含む二次創作をする「やおい族」をこれでもかというくらいに貶めている。作者の嫌悪感まで伝わって来そうな描写は、当時「やおい族」がそれだけのことをしているという証しであると思う。社会の成り立ちを知らぬ10代〜20代前半を中心とした女性たちが、物事の善し悪しの判断出来ずに大金を手にした為に自分たちのしていることを正当化してしまい突っ走ってしまった「やおい族」。大手サークルとなると何千万円も売り上げ、噂ではマンションを買った人もいると言われているほど。しかし、所得税を払わなければそれは違法行為となる。そして、著作権の問題も。当時最も酷かった実態を漫画という形で表現している。

 現在では、コミックマーケットは会社となり、大手サークルも会社形式となるなど、当時のような無知ゆえの悪質な荒稼ぎはなくなった。…いや、表沙汰にならなくなっただけなのかも知れない。何しろコミケというところは何万人という人が集うにも拘らず「同人」という共通語によって独自の連帯感が成り立っている世界。その世界の中では、外部の人間には計り知れない暗黙のルールが多数存在していても不思議ではない。これほどの多くの若者が存在する世界を生んだ現代の社会を先ずは考えなくてはならないのかも知れない。

 この本では、当時最も流行していた『聖闘士星矢』『キャプテン翼』が取り上げられている。当時私は、社会人に成り立てでこのような世界が繰り広げられていたことを知らずに過していた。私は両作品を見ていないが、それでもその頃にこの世界と出会っていたら、現在の私はいなかったと思う。それほど大変なエネルギーと一般的な視点から異常と言えるほどの世界が繰り広げられている。作品とキャラクターを激しく愛する女性たちの世界。この世界は、現在も厳然として存在している。この本は、現代社会に対して警鐘を鳴らすに必要にして生まれた本だと思う。
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