「スーパーマリオブラザース」や「戦場の狼」、ＲＰＧなら「ド
ラゴンクエスト」や「ゼルダの伝説」。ファミコン時代のゲームと
いうと、実に多くの名作タイトルが思い出されますが、そこを敢え
てこのマイナータイトルを選んでみました。
　内容は単純そのもので、館に隠された宝をもう一人のスパイと奪
い合う。ただ、それだけです。館の内部は３Ｄ風の迷路になってい
て、二人用に上下二分割されています。
　スパイたちは金庫や棚から宝を探すだけでなく、様々な罠を仕掛
けることができます。箱を開けると爆発するようにしたり、扉を開
こうとした者をバネではね飛ばすようにしたり。コントさながらに
バケツが降ってくるなんてのもありました。
　罠にかかった相手は、一時的に天に召され（背中に羽が生えて飛
んでいきます。このあたり、平和ですね）かなりの時間行動不能に
なります。それを利用して有利に宝物を集めるわけです。が、この
罠は仕掛けた本人に対しても容赦なく発動しますので、考えなしで
は自分の首を絞めることにもなりかねません。
　マシンも相手をしてくれますが、二人で対戦するのが、このゲー
ムの醍醐味。それぞれのスパイを受け持って、同時にプレイするの
がミソなのですね。
　それぞれの性格がもろに出るんです、このゲーム。相手のことな
ど眼中になし。ただひたすらに宝物を集めようとするプレイヤーも
いれば、その逆に相手を罠にかけることに熱中するプレイヤーもい
る。時に、金庫のなかから剣が出てくることがありまして、これを
使うと相手を直接攻撃できます。そして、そうなった時にとる行動
も人それぞれなんですよ。館の端から反対の端まで追っかけてくる
奴もいたりして。面を重ねていくうちに、段々とプレイの目的が変わっ
てきます。
　そうです。このゲームはつまり「意地悪合戦」なんですね。誰で
もそういう一面や攻撃性を持っているものですが、ゲームだからこ
そ、気兼ねなく、恨みっこなしでやり合えます。
　最近で言えば格闘ゲームがこの部類になるでしょうか。でも、格
闘ゲームは基本的に「勝つ」ことが目的と言えるでしょう。または
より高度な技を出せるように「熟練」していくことですとか。
　「SPY VS SPY」はそれとはちょっと違ってまして、「相手を困ら
せられる」のが楽しいんです。だから、仲のいい奴が相手でないと
つまらない。どうですか？　その心理、お分かりいただけるんじゃ
ないでしょうか？
　もうカセットどころか、ファミコンそのものも所持してなどおり
ませんが、あの頃の友人達と今、この歳でプレイしあったとしても、
おそらく盛り上がりに盛り上がることと思います。それが、このタ
イトルを選んだ理由です。その後、数え切れないほどのゲームをプ
レイしましたが、比較的新しいものと比較しても、そういう「ゲー
ムの本質」ではトップクラス。それは間違いありません。

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