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「水曜日のジゴロ/伊集院大介の探究」 栗本薫
投稿日 : 2003/01/24 23:50
投稿者 久保田r
参照先
2002年12月20日 (株)講談社

 六本木のとある女性専用バー「クラブ・樹」に、ある日、芸能人も顔負けの美青年、千秋が女連れで訪れる。レズビアンの樹は、そのうちの一人、雅子と近所の顔馴染みの店で一夜を共にするが、その店からの帰り道、雅子は無惨な死を遂げる。六本木で次々と起こる猟奇的殺人。伊集院大介の推理の行方は・・・。
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性と向き合う
投稿日 : 2003/01/24 23:52
投稿者 久保田r
参照先
 現代の性に直面した小説。
 伊集院大介の職業は探偵で、この本は、推理小説、探偵小説と呼ばれるジャンルに属する本になりますが、実際は、伊集院大介の行動を読み進んで行くストーリーではなくて、「クラブ・樹」のマスター、樹の行動と思考を読んで行くストーリーとなっています。樹の取る行動、行く場所にてそれぞれに「こいつが犯人か」と思わしきものとぶつかるので、樹を追って読んで行くことで、読者が伊集院大介となり、最後の本物の伊集院大介の謎解きで、解答を得る、ということになります。ですが、読み進んで行くうちに、樹の性格や思考に入り込んで、彼女の気持ちにシンクロするようになると、いつしか自分も迷える性の小羊となり、樹と共に伊集院大介の救いを待つ、という展開になります。推理小説はどうも苦手という人でも、樹の波乱万丈な生活に浸って、彼女の身になって、話を読み進めて行くという方法でも良い小説になっていると思います。
 さて、ここに取り上げられていますのは、「現代の性」で、樹の「何故自分は女を抱くのか」という自問自答から始まって、男女の乱れた性行為や、歪んだフェティシズムにまで及んだ「現代の性の有り様」についてことごとく書き記されています。六本木という「性」に解放された街で起こる殺人。しかも犯人は、性行為の最中に女を殺すという猟奇的な犯罪を犯す。一方、女を抱く女である樹もまた、「自分は女を嫌いになりたいから女を抱くのではだいろうか」という、自分自身の内面と真剣に向き合う。美貌ゆえに一夜の相手に困らない千秋もまた、「性」というものに対して不能気味になる。誰一人として「性」というものに関して、まともだと呼べるような人間が登場しないこの小説は、まさしく「現代の性」によって生み出された小説だと思います。
 出会い系サイトが原因で「性」に絡んだ犯罪が後を断たない現実の世界。この小説に描かれているのは、架空の物語とばかり言えない、人間の内面に潜んでいる「性」への問題を浮き彫りにした問題作であるように思います。
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