「後催眠」 松岡圭祐
投稿日 | : 2000/11/18 01:18 |
投稿者 | : Excalibur |
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『催眠』の数年前を舞台にした、同じ嵯峨敏也を主人公とする物語。
サイコホラー映画としての『催眠』しか知らなければ、この内容には違和感を覚えるだろう。ここで描かれているのは、なんとも切ないファンタジックなラブ・ストーリーだからだ。ただ元々の『催眠』も、ダニエル・キイスもかくや、というハート・ウォーミングなストーリーだったわけで、そういう点ではこれは正しく原点帰りといってもいいのかもしれない。シリーズそのものは、現在は『千里眼』シリーズと合体し、アクション路線まっしぐらであることを考えると、その振幅の度合いは興味深い。
少しずつ謎が明らかになっていき、最後にホロっとさせられる結末は著者の力量を充分に感じさせてくれるが、<後催眠>というものの効力に一抹の戸惑いを感じてしまったのは私だけだろうか。