「新版 シルマリルの物語」 J・R・R・トールキン
投稿日 | : 2005/01/02 14:41 |
投稿者 | : Excalibur |
参照先 | : |
『ホビットの冒険』や『指輪物語』に填った読者が、おそらく次に手に取るであろう一冊です。未完のままで作者の生前には出版されず、その死後に子息の手によってまとめられて日の目を見たという経緯がありますが、実は構想はこちらが先。中つ国の誕生から第一紀、第二紀の出来事が中心に描かれ、『指輪』はそれを前提に物語が進められています(『指輪』の舞台は第三紀末)。そのために『指輪』の作中で唐突に出てくる神話・伝説は、こちらを読めば(読まなきゃ)わからない仕組になっております。
それだけでなく、サウロンに先立つ初代の冥王モルゴスの暗躍、エルロンドやガラドリエル、イシルドゥアなど『指輪』読者にお馴染みの名前も並び、特に最後の「力の指輪と第三紀のこと」は『指輪』のダイジェスト、かつその背景についても詳しく描かれていますので、ガイドブックにもなりますが、残念なのは『指輪』以上にとっつきが悪く読みにくいこと。元々小説として完成されているわけではなく、創作神話の集成という感じなので無理はないんですが、挫折者は続出しそう・・・。