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「六道ケ辻/死者たちの謝肉祭」 栗本薫
投稿日 : 2000/12/05 01:41
投稿者 久保田r
参照先
平成12年6月15日 角川書店発行

舞台は、終戦直後、東京。
復興の兆しを見せる下町で、復員兵・西郷は「ダイドウジ」を名乗る人物に出会う。次第に明らかになる彼ら一族の忌わしき過去、そして、町を徘徊する猟奇連続殺人者<人食い鬼>ー。(以上、帯より抜粋)

「六道ケ辻」シリーズの第5弾。今回はこれまでと違って、大導寺の血縁関係の者ではない赤の他人、復員兵・西郷が主役となって書かれています。この新たな切り口は、第4作までのその最初のページから漂って来る大導寺の血の濃い空気が他所ごとのように描写されていますので、割と読みやすく感じました。
この本を読んでいると、戦争の残した爪痕を感じ取ることが出来ます。焼夷弾を落とされ、焼け野原となった首都に命からがら生き残った人々。天涯孤独となった人間達は、生き残ったが故に見てしまった死者たちの死に様に生きる気力さえも失っている。戦傷を負って帰って来た復員兵もまた、戦地で自分がして来たことと平和を取り戻しつつある日本の間で環境に精神が付いて行けずに、生きている実感すらも沸かない。そんな人間達を背景に物語は紡ぎだされています。
大導寺一族の中で極めて生命力の強い大導寺竜介と、やはり大導寺の忌わしき血を引く西御堂薫の両者が物語の鍵となります。そして今回「ダイドウジ」の因縁話しを語った若干17才の大道寺雅臣が、今回だけの登場にしては勿体無さ過ぎる人物でしたので、今後の作品での活躍が期待されます。
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