「帰還」<ゲド戦記 最後の書> アーシュラ・K・ル=グウィン
投稿日 | : 2006/04/02 18:16 |
投稿者 | : Excalibur |
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全3部作とされていた<ゲド戦記>の、18年ぶりに書かれた続編であり、完結編です。
これまでの3作品はいずれも独立したお話になっていましたが、この物語は前作『さいはての島へ』を受けておりまして、ゲドは勿論のこと、前作の主人公だったレバンネンも引き続き出てきます。
但し中心を担っているのは、第2作『こわれた指環』のヒロインだったテナーと、彼女が育てている傷を負った幼い少女の二人。このテルーと呼ばれている少女が、必要以上と思われるくらい残酷な仕打ちを受けていたという設定が、これまで<ゲド戦記>に親しんできた読者には強烈な違和感をもたらしています。
また本来ならゲドと似合いの一対であったはずのテナーは、その後は平凡な妻となり母となり、今またゲドと再会するのですが、一方のゲドももはや魔法使いではない、一切の力を失った初老の男として登場するなど、これまた読者の期待を大きく裏切ってくれています。これは既に子ども向けのファンタジーではありえず、”老い”というものを身近に感じ始めている熟年世代がターゲットと言えるでしょう。遂に結ばれてしまうゲドとテナーの姿には、何故か『マディソン郡の橋』がダブって見えてしまいました。つまらないのかと問われればノーと答えるのですが、最後まで戸惑いの中で読み終えた一冊です。
結局はこの作品で<ゲド戦記>は完結せず、後にもう1作書かれることになりましたので、結論はそちらを読み終えるまで保留ですね。